エピローグ
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いつの間にか日が暮れてしまっていた。
もう僕の周りにあの時の仲間はいない。
仕方がないことだ。
と自分の心の中で割り切る。
そんな心の鎮静剤もうほとんど効果を表さない。
あの時の二人を思い出すとやはり心が乱れる。
どうしようもない、やるせない気分が僕の体を襲う。
ワタルとはあれきりあっていない。
どうやら今はどこか遠い国で細々と暮らしているようだ。
叶星はあの後、数週間あの施設にいたが、やがて本人の意向などによって、僕の家に同居することになった。最初の数ヶ月間は、叶星にとってとても有意義な時間を過ごしていたと思う。僕はこんな貴重な思いを忘れまいと必死だった。彼女といろんなところに行った。
けれども、彼女と同居して2年目の頃に、異変が起き始めた。
彼女は夜に一人で静かに泣く様になった。理由は教えてくれなかった。ただ一言、
「怖いの」
とだけ僕に返した。
そして、その年の年末に彼女は僕の前から姿を消した。
仕事から帰ってきて、無機質な机の上にはこんな置き手紙が置いてあった。
『今日、私はここを出て行くことにしました。
理由は自分自身を再生するためです。この二年間、私はコウキくんに守られてこうやって生活していました。だけど、今度は自分でいろんな問題にチャレンジしてみたいと思ったからです。
この二年間で私はいろんなことを経験しました。いろんなところにも行ったりしました。そのどれもが素晴らしく、いまでも昨日のことの様にとても鮮明に覚えています。
くれぐれも私が貴方のことを愛していないなんて考えないでください。私はいつまでもあなたのことを考えるし、これから一人になってしまう時も寂しい時にあなたのことを考えてしまうでしょう。だけどそれではダメなのです。自分が自分ではなくなってしまうから。またコウキくんやワタルくんに頼ってしまうから。どうかお元気で。
またいつか会えることを心待ちにしています。』
そこには僕とワタルの似顔絵と共に小さな花が添えられていた。
僕はいつまでもその手紙を見つめていた。
またひとつ、約束ができてしまった。
いつか君と、いつかの君と 蜜蜂計画 @jyoukai
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