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 ついにこの日がやってきた。

 あれから二週間、ずっと叶星のことを考えていて、自分の中でふわふわした心持ちで過ごしてしまっていた。

 叶星をどう迎え入れるべきなのか、どうすれば良いのだろうか?

 場所は成田空港の貨物ターミナルのヤードと指定された。

 僕が指定された日時に行くとワタルはもうすでに待っていた。

「待たせたな」

「おう」

 ワタルは周りをキョロキョロと見渡したり、携帯をいじったりと不安でいっぱいのガキみたいにどこか落ち着かない様子で僕に言葉を返した。

 しばらくすると、ヤードの内側からワンボックスの車が出ててきて、僕たちの前で止まった。

「乗るぞ」

 ワタルがそう言ったから、僕も彼に続いて乗ることにした。

 そこには一人の中年男性がすでに後部座席に座っていた。

 後でわかったのはそれはワタルの先輩である森さんだということだ。


 帰り道は高速をひたすらに走っていった。

 急ぐ訳でもなく、かといってのんびりする訳でもなく。


 いつの間にか寝てしまっていたのだろうか。

 どうやらもうすぐワタルの研究室兼自宅の様なところに着くそうだ。

 いつの間にか日がとっぷり暮れてしまっているようだ。

 ついたと同時に、ワタルの仲間が毛布にくるまって息をする叶星を抱き抱えて建物の中に入っていった。

 ワタルが

「こいよ」

 という。


 建物の中は新しい訳ではないが、かなりきれいになっていた。

 僕はベットの上で横たえている叶星を見つける。

 その姿は、いつの間にかとても美しくなってしまっていた。

 なぜこんなにも美しい人物がここにいるのだろうかという疑問さえ生まれてくる。

 僕は彼女がいるベットのところまでゆっくりと歩み寄り、彼女の手を握る。

 ほんのり暖かい気がした。

 彼女の中で『生』が動いている証拠の一つでもある。

「神様…どうか…」

 そう願って見てもどうにもすることはできない。


 その時、とてつもない眩い光が僕たちのいる部屋を襲う。

 そんな奇跡があるのだろうかと自分自身でも疑ってしまう。

 だってもう外は夜なのだから。

 ではなぜこんな光が今起きたのか?

 そんなことを考えていたら現世に戻される。

 若干の喪失感と諦めを身体に直に感じながら、もう一度彼女の手を握り直す。

 それでも叶星の目は開かないと思った次の瞬間、

 彼女の目がうっすらと開いた。

 その目には微かな光が灯っていた。

 叶星は少し笑っていた。

「会いたかったよコウキくん、ワタルくん」


「またひとつ、果たさなきゃいけない約束ができてしまった。」

「もう離れないよ。叶星」

 いつの間にか僕の目には海ができていた。









 まだまだ生きなきゃならないな。

 叶星のために。

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