第21話 不毛な争い勃発

 ひとり不幸な落伍者は出てしまったが皆が揃った。

 周りから見れば華やかな女子高生の集団。

 そこに一員として混じっている男の自分に思わず疑問を感じる……こともなく、普通に違和感なく溶け込んでしまっていた。


「えっと、クミちゃん、今日はどこに行くの?」

「それで安藤。今日はどこに行くつもりだ?」


 僕と咲輝ちゃんの言葉が被ると、凄く嬉しそうに咲輝ちゃんが僕を見てきた。


「はいはい、今日はユーズド巡りに付き合ってもらうよ。天使ちゃんはもちろんだけど、サーキもアンコも何気にお嬢様感あるから、行ったことないっしょ?」


「ユーズドですか? 確かに私は古着屋さんには行ったことないですね。偏見かもしれませんが他人の着ていた服を着るのは抵抗があると言いますか」


 御手洗さんが正直な気持ちを伝える。

 それに対してクミちゃんがチッチッと指を振って答える。


「だからアンコは、いつまで経ってもこし餡になれないんだよー」


「なっ、何度言えば理解するんですか私はアンです。それにこし餡の方が上な言い方をしないでください私は粒餡派ですから」


 何故か勝ち誇った表情の御手洗さん。

 そこへ、いつもなら飄々と流しているのに食いつくクミちゃん。


「うわー、ありえないっしょ、アンと言ったらやっぱりコシ、コシでしょ」

 

「はぁあ、それこそなんばいいよっとね、アンは粒って決まっとーとよ」


 そんなクミちゃんに、ヒートアップした御手洗さんが返す。でも秘密にしていたはずの方言が出てしまっているのだけれど、御手洗さんは気付いているのだろうか?


 そんな僕の懸念をよそに、二人は僕の方を見ると当時に尋ねてきた。


「天使ちゃんはどっち?」

「コーネリットさんはどっちですか?」


 この論争は正直言って、キノコとタケノコを巡る争い並みに不毛だ。

 でも、彼女たちが白黒ハッキリとした決着を望むのであれば僕はあえて正直に僕の好みを答える。


そう…………「白アン」だと。


「「ほえっ」」


 予想外の答えに呆気に取られる二人。

 狙い通りに不毛な争いに終止符がうたれた。


 しかし、争いの目は既に飛び火していた事に、僕は気付くのが遅れた。


「私は断然うぐいす派だな」


 聞かれてもないのにそう答えた咲輝ちゃんに対して吉岡さんが珍しく食ってかかる。


「いやいや、うぐいすなら、絶対にずんだの方が上っしょ」


 そしてまた無益な争いは繰り返される。


 その戦いの終焉は紆余曲折あって、イチゴ味が出たらキノコとタケノコ両方買いたくなるよねとの意見に対し「わかる!」と意見の総意を得て終わった。


 そうして話しながら目的の場所までクミちゃんの案内で着く。


「ここは、チェーンで大きくて品揃えも良いからさ、入門にはうってつけってわけ」


 わりと大きめで綺麗な店舗に安心したのか御手洗さんの警戒心も緩む。


「まあ、見るだけなら」


 ただ、あまり古着に興味なく、気乗りしないのは表情から伝わった。

 そんな御手洗さんのモチベーションを上げようとクミちゃんが一つの提案をする。


「まあまあ、何ならアンコの服コーデしてあげるからさ、絶対に気に入るって」


 そして、クミちゃんの提案に咲輝ちゃんも乗っかってくる。


「あっ、だったらイヨリちゃんには私の服を選んで欲しいです」

 

 残念ながら咲輝ちゃんの方が背が高いので上目遣いにはならないが、目をウルウルさせて懇願してくれば嫌とは言えない。

 

「分かったよ。咲輝ちゃんにびったりのイメージで考えてみるね」


「うん、ありがとうイヨリちゃん」


「あー、だったらあーしは天使ちゃんに着てもらいたい服を選んでイイ?」


 吉岡さんも目をウルウルさせて訴えかけてくる。

 なんだろうこうすれば僕が認めてくれると思われてているのだろうか。

 でも、まあ服くらいなら構わないだろうと返事をする。


「うん良いよ、吉岡さん」


「やりぃ、じゃあさ、じゃあさ、もしあーしのコーデ気に入ったらさ、お願いひとつ聞いてくれる?」


「まあ、無理のない範囲ならね」


 僕としては、断って、またウルウルな瞳でお願いされても困るので、出来る範囲でという条件で引き受けた。


 それから皆で店に入ると、クミちゃんは店の人とも知り合いらしく、今日来た趣旨を説明して協力を願い出る。


 どうやらその人はお店の店長だったらしく、逆に美少女達のちょっとしたファッションショーというプチイベントに「使えるわね」と喜んでいた。


 お店の許可も降りたことで、各自で服を物色し始める。


 その中で咲輝ちゃんと御手洗さんは慣れていなので本当に眺めているだけだった。


 クミちゃんは誘っただけあり慣れた様子で生地感や縫い目の細かいところまでチェックしていた。


 吉岡さんも手慣れた感じだが、服の質よりか、僕に何を着させようかで悩んでいるらしく、終始ニヤニヤしていた。


 そして僕はと言うと、咲輝ちゃんに似合いそうな服を探す。正直、こういう店にそっち系のジャンルの服があるか分からなかったが、幸いなことに見つけることが出来た。

 早速その中からさらに咲輝ちゃんに似合いそうな服を厳選する。


 お目当ての品を見つけて戻るとクミちゃんと吉岡さんも選び終わっていたようで発表順をじゃんけんで決め、御手洗さん、咲輝ちゃん、僕という順番になったのだった。


 


 



 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

天使が舞い降りたら〜切っ掛けは二股されて男らしくないからと振られた事でした。姉の助言で男の娘になったら僕の周りには美少女ばかりの百合?ハーレム。一方で元カノと間男は後悔しているようです……知らんけど。 コアラvsラッコ @beeline-3taro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ