最終話 これが私の生きる道

side:エリカ・セレナイト公爵夫人




「奥様、焼き上がりのチェックをお願い致します。」


「はーい、どれどれ、、、右から3番目と8番目は少し焼き色が濃いですね、孤児院への寄付用にして下さい。」


「かしこまりました。」





「エリカさーん、今大丈夫かな?」


「ええ、構いませんよ」


「父が出来立てのフレンチトーストを食べたいって言ってるんだけど、駄目かな?」


「フレンチトーストは先日、宮廷料理人に作り方を教えたはずですよね?」



「それがさ、上手く焼けないらしいんだよね。あとエリカさんに会う口実が欲しいというのもあると思う(笑)」


「結婚式には招待出来ませんでしたからね。分かりました、王妃様に新作のお菓子を献上するという名目で登城します。旦那様も一緒ですよね?」


「勿論だよ、エリカさんだけで行かせたら馬鹿な貴族がちょっかいを出して来るだろうからね!」



『『『スチャッ!』』』


「旦那様、そういう事であれば我々が先行して露払いを致しましょう♪」


「おおっ!義父殿に認められた皆が居ればこれほど頼もしい事は無い♪」




あぁ~


メイドの皆が何処からともなく凶悪そうな武器を取り出して、素敵な笑顔で笑っていますけど


どうしてこうなった?!




いやまぁ自業自得と言えばそれまでなのですけど


お父様とラルフさんが戦ったあの日


改めてラルフさんから交際を申し込まれた私は、快諾してそのまま結婚してしまいました(笑)


残念な事に戦うラルフさんの姿に『惚れた』訳ではありません


学園で毎日お昼ご飯を一緒に食べていた時点で、お互いそれなりに好いていたのは事実でしょうけれど



私は前世の春山絵里香の記憶が混ざった、子供であって子供で無い存在であり、様々な経験を記憶として持っているせいで


ちょっとやそっとじゃ、夜も眠れないくらいに誰かに恋するというのは難しいのです(悲)



だからこそ、一緒に居て心地好いと思えるラルフさんと結婚をしようと決められた訳ですけど


おっと


そんな事より武器を持って王城に行こうとしているメイドの皆を止めないと!



「今日のおやつはイチゴのショートケーキにしようと思っていたんだけど、皆が出かけるなら作っても無駄になっちゃうから作るの止めようかなぁ」


「「「なっ?!」」」



「お嬢様、そのような悲しい事は言わないで下さい。我々も全力でお手伝い致しますので!」




ふふっ


結婚してウルツァイトハート男爵家を出る時に、一緒に付いて来てくれたメイドのアイナさんが瞳をウルウルさせている姿は


かなり可愛いです!



本当はメイド全員が付いて来たがったんだけど、私の専属のアイナさん以外はローテーションで数名ずつセレナイト公爵家に来て働いています。




「エ~リ~カ~♪お姉ちゃんですよ~♪」


「いらっしゃいお姉ちゃん」


「エリカが結婚してから毎日会えなくてお姉ちゃん寂しいです。」


「確かに毎日は会えて無いですけど、『ほぼ毎日』会いに来てますよね?」


「むぅ、、、エリカがいじわるです(泣)」


「えぇーっと、お姉ちゃんも忙しいだろうから無理はしないで欲しいなって思ったんですけど(汗)」


「確かに忙しいですけど、嬉しい悲鳴と言うやつですから問題ありません。」



フレデリカお姉様が忙しいと言うか、ウルツァイトハート男爵家が忙しいのですけどその理由は


ウルツァイトハート男爵家で、ジャム、生クリーム、バターの製造販売をする商会を立ち上げたからです。


そしてセレナイト公爵家で、生クリームやバターを使ったお菓子の製造販売をする商会を立ち上げました。


予想通り私の作るお菓子は貴族の間で人気になり、半年先まで予約でいっぱいなのです♪



「やぁフレデリカさんいらっしゃい、義父殿と義母殿はお元気ですか?」


「セレナイト公爵こんにちは、こちらは変わらず皆元気でございます。」


「そんな他人行儀な言い方は止めてよフレデリカさん」


「公私混同は良くないかと思いまして(笑)」




ふふっ


フレデリカお姉様がラルフさんをからかうのも最早日課となりつつあります。


そうそう!


ラルフさんは結婚後セレナイト公爵家を継いで


ラルフ・セレナイト公爵となりました。


第3王子が何故公爵に?という疑問があるかと思いますが


フレデリカお姉様がラルフさんを王族から除籍させたからです。



第3王子と結婚して私が王族になると、気軽に会えなくなるのが嫌だという理由で


ラルフさんを除籍しないと今後一切王族の治療は許否すると、フレデリカお姉様が王様を脅迫したからです。


ラルフさんが正妻の子ではなく、側室の子だったから問題にならなかったとはいえ


無茶し過ぎぃー(汗)



まぁお陰で私は存分にお菓子作りが出来ているのですけどね♪


王族を除籍された事で王様というか、義父様を結婚式に招待出来なかったのは心残りですけど


それは今後、孫の顔を見せるとか新作のお菓子を1番早く食べさせるとかで許して貰いましょう♪




私の前世、春山絵里香の記憶が甦ったお陰で、良い事も、戸惑う事も沢山ありますけど


今日も私は元気にお菓子作りに励みます!



それがエリカと絵里香の記憶を持った


エリカ・セレナイトの生きる道なのですから♪






おわり。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

【完結】スクールカースト最下位の嫌われ令嬢に転生したけど、家族から溺愛されてます。 永倉伊織 @iori_nagakura

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ