私と契約してアシスタントになってよ
結局、僕の言うことをすんなり聞いてくれた藍原さんは壁一面に張っていた紙をを綺麗に重ねてゴミ捨て場にてお祈りと共に置いてきたらしい。
僕としても流石に捨てろと入っていないので慌ててしまったが聞けば藍原さん自体も掃除をしたかったらしくタイミングが良かったのとのこと。
まぁ、そんな風に割り切れるのなら最初から捨てて綺麗にしてほしかったけども……多分、エロ漫画家って言うのは多少は頭のねじが吹っ飛んでいないとできないのだろう。
「それで……朝ご飯は作りましたけども、僕ってほかなにすればいいんですか?」
「え、そりゃもう私のお世話係でしょ?」
「というと、掃除とか、洗濯とかですかね?」
「ん~~、あとはあれね。私の欲しい機材の買い出しね!」
「……やっぱり、なんかもう購買の焼きそばパン買ってこいよみたいになってますよね」
「パシリと一緒にしないでよ~~! 正真正銘、立石君は私の執事みたいな感じよ?」
「それをパシリって言うんですよ。ていうか、執事だなんてやめてください。僕はそんな大層なものになるつもりはないんですよ?」
「うーん、良いシチュエーションに使えると思ってたんだけどなぁ……」
「……真面目に話してるんですけど、僕は」
「ん、あぁ、私だって真面目よ! これが仕事だからね! エロい事考えてお金を稼ぐ! 私だけの
「……はぁ、なんでもないです。藍原さんに聞いた僕が馬鹿でした」
「え、え? 別に何も私は——」
「いいですよ。ほら、洗濯済ませておくので藍原さんは仕事しててください!」
結局、エデンだとかエロい事だとか、この人はそう言う人だから生きれているんだろうけども――うん、なんか、くだらないことを仕事にできるのはすごく羨ましく感じてしまう。
ま、そんな人に拾われた僕も言わばラッキー者なのかもね。
とにかく今はこの人の
その後、気合を入れた俺は藍原さんがペンタブと睨めっこして必死にエッチな絵を描いている隣で洗濯物を干して昼ご飯を用意した。
やがて昼になって、ぐぐぐと藍原さんのお腹の音が鳴ったと同時にご飯を食べることにした。
「あぁ……」
作ったおかかおにぎりを美味しそうに頬張るものの、藍原さんにさっきの威勢はなかった。
そういえば、女性はそう言う日になると気分が悪くなったりお腹や頭が痛くなったりするって聞いた事があるなと思い出して背中を擦ってみる。
「ん、立石君?」
「あぁ、その。お腹痛いのかなと思いまして」
「え、あぁ――ごめんね。そういうわけじゃないんだ」
「じゃあ、どうかしたんですか?」
どうやら僕の予想は外れたらしく、体を机から起こして困ったように呟いた。
「そのね、今は健全なイラストの仕事を引き受けててね」
「はい。珍しいですね」
「まぁ、私だってちゃんとしてるんだよ? その、その絵の背景でちょっとてこずっててね」
「背景に……なんかの表紙絵とかですか?」
「うーん。まぁ、映画化した小説の表紙……なんだけど」
「へぇ……すごいですね」
あまりこの仕事のことが分からなかったがそう訊くと凄いものがある。
若干の小並感を出しながら聞いていると彼女はそのままイラストを見せてくれた。
「ほら、こんな感じでさ」
「あぁ……」
言われて見せられると確かにうまくはいっていなかった。素人でもそんな風に分かるからきっとプロの中ではもっと認識が深いのだろうと思いつつ、イラスト自体のバランスは悪く見えた。
真ん中に映っている涙目の女の子は凄く良く見えるけどその周りの建物とか地面とか空が明らかに不自然だった。
どうやら、聞くと全体絵をかくのは初めてらしくいつもは背景をほとんど書かないので苦戦しているらしい。
「背景ですか……」
そう言われて僕は心に引っ掛かった。
「ん、何かあるの?」
「いや、えと、あるっていうかですね……」
顎に手を当てて少し考えて、藍原さんのペンタブを借りて僕も僕で筆を走らせてみる。
すると——
「えぇ⁉ 何それ⁉」
驚く表情に若干恥ずかしくなりながら画面を見せる。
そこには正真正銘僕が書いた風景画。
もちろんラフだが相性はバッチリだった。
「あぁ、その、僕風景画は自信がありまして」
少しだけやってしまったかなと思いながらもそう呟くと僕は駆け寄ってきた藍原さんに手を握られてすぐに――
「ねぇ、私と契約してアシスタントになってよ!」
と、まるできゅうっとしたべぇみたいな台詞を投げかけられてしまったのだった。
【あとがき】
遅れてすみません!
現在、カクコン準備中のために全作品の投稿頻度下げてます! ご理解お願いします!!
人生諦めてた僕が河川敷で猫耳アラサーお姉さんを拾ったおかげで生きるしかない話 藍坂イツキ @fanao44131406
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