E、いやF、もっとかG
「うはぁ~~、おながずいだぁ~~」
「今作るんで待っててください」
人に料理を振舞うのはいつぶりだろうか。
きっと、雫に作って以来だからかれこれ10年近く立っているかもしれない。保護センター時代におばさんに料理を教わってから「どうせ一度も使わないだろうな」と思っていたのだがこうもあっさり達成しそうなのは神様からの皮肉か何かなのかなと思ってしまう。
おばさんの言っていたことは本当だったな。『将来、好きな人の胃袋を掴む男はモテる。だから今練習しときなさい』と。
まぁ、藍原さんの事は生憎と好きではないけどな。
ん、いや。別に嫌いでもない。下ネタで押してくる理由も分かったし、この人なりに僕の事を笑わせてくれているのだと理解している。
多分、なぜ僕みたいな細身の高校生があんな時間に外を出歩いているのかもきっとわかっている。そんな気がする。
心優しい人間だからこそ、嫌いではない。苦手ではあるけどもね。
顔も綺麗だし、染めているのかよく分からない桃色の腰辺りまで伸びている長髪も似合っている。胸も大きくて、僕の人生で見た胸のなかでは確実に一番だ。EかF、もしかしたらGカップ以上あるかもしれない。
そんな強大な胸に、やや大きめの身長。身長170㎝行かないくらいの僕と数センチ差しかない。
スタイルは完璧、ぼんきゅぼんだ。
このままもしもずっと居候することになったらきっと惚れる体形をしている。
正直怖いよ、僕は。
「ねぇねぇ、今日のご飯はなにぃ~~」
てなわけで僕は藍原さん、別名「オホ声ダブルぴーす先生」に朝食を作ることになっていた。どうやら、昨日の夜に寝てしまい、目を覚ましたのは翌日の朝だったようだ。
知らない人の家で一泊、未成年のすることじゃないな。
いや、もう未成年か18だし。
「今日はジブリ飯を作ろうかと」
「ジブリマシマシ?」
「僕の朝食は二郎じゃないですよ」
「お、二郎食べたことあるの⁉」
「まぁ、なんとなく行ってみましたね。もう行きたくはないですけど」
「……そんな体じゃあ無理だね。君にはあの美味しさが分かるまい!」
「なんかそう言われるとムカつきます」
「あはははっ。おこちゃまには分からんよ~だ」
「そうですかっ」
見れば分かる通り僕は細身だ。
小食で、あんな多いのを食えるわけもない。
「僕は藍原さんと違って小柄で細身ですからねっ」
「っ——⁉ ちょ、ちょっと、わたしのことをまるで太っているみたいに!」
「だって事実じゃないですか。胸はでかいし、お尻もデカいですし、肉付きよさそうですよ?」
「うわぁ~~なんかエッチだね、やっぱり男の子って感じ」
「べ、別に……そこだけ見てるわけじゃないです! ただ、見たくなくても見えてくるので……」
「へぇ、のわりには顔真っ赤だし……おちそちそ膨らんでるよ?」
「えっ⁉」
慌てて下腹部に視線を向けるが別に普通だ。
っていうか、見なくても分かるじゃん。感覚で。
「藍原さん……」
「うわぁ、ジト目怖い~~」
「朝食やりませんよ」
「そ、それだけは勘弁!!」
「……はぁ、まったく」
溜息を吐いて、縋りつく藍原さんをリビングのテーブルに座らせる。
ジブリ飯、ベーコンと目玉焼きのトーストサンドを美味しそうに頬張る彼女を見て僕は呟いた。
「食べ終わったらまずこの壁紙何とかしてほしいです」
「やだ」
「じゃあ作りませんよ」
「……わ、分かった」
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