元伝承・解説
元伝承・解説
『宝亀元年4に保呂波山から夜叉鬼がきて女米鬼山に住み、里人の娘を奪い妻として、大瀧丸を生んだ。略奪を繰り返すので村民は恐れて古種沢鏡池より保量大権現を勧請し、その難を逃れようとした。現在由里群大正寺村、河辺郡女米鬼村、男鹿半島の一部に伝わる「悪魔払い」あるいは「ナモミハギ」の行事は、その難を忘無いために始まったのではないか。』
(中村 善之助「羽後の悪魔払ひ ―夜叉鬼及び大瀧丸の事―」『民族と歴史』2巻2号(通巻8号)日本学術普及会、p51.より)
「ナモミハギ」とはなまはげの事です。奪うとあるのですが、実際は相思相愛です。またここでは女米鬼山の名前の通り米子も鬼扱いです。
しかし、私は「なまはげ」が元々悪鬼だったという説には否定的です。夜叉鬼=悪鬼というのはあくまでも京から見た姿です。秋田側から見たら「なまはげ」は守護神です。
また主要五説の中によく見られる説である「漢の武帝が男鹿を訪れ、5匹の鬼を毎日のように使役したが、正月15日だけは鬼たちが解き放たれて里を荒らし回ったのがなまはげのきっかけ」という説にも筆者はちょっと否定します。わざわざ中国から日本に武帝が来るわけないだろと(失笑)
『昔、高雄山に夜叉鬼という鬼がいて、白石善五郎の娘の米子という美女の大女(二メートル)を娶り、大滝丸が生まれた。坂上田村麻呂の征討の際、夜叉鬼は大滝丸を抱え、男鹿の山へ一足とびに逃げた。その時の足跡が今も沼地となって残っている。米子は矢にあたり死んだ。その血が山路を赤く染めたので、その地を赤坂とよんでいる。また、田村麻呂が夜叉鬼へ射たのが鷹の尾で作った矢であったことから、鷹尾山と名づけられ、現在の高尾山になった。』
(木崎和廣編『羽後の伝説』p106、1976.より)
このことからも分かる通り、夜叉鬼は「飛行夜叉」つまり空を飛ぶ夜叉であることが分かります。天夜叉か虚空夜叉ということになります。しかも米子は長身の美女であることが分かります。ここでは「娶り」とあり相思相愛であることが分かります。しかも鬼側に付いて戦った人間であることが分かります。
また秋田→男鹿に逃げたこともこの文章で分かります。つまり上記のなまはげ伝説に夜叉鬼が結びつくわけです。
ですから、これらの伝承を足して二で割って今回創作童話の制作に至りました。なお副将軍などの鬼族の名前はオリジナルキャラです。
最後に。夜叉鬼が米子から教わったかなは「万葉かな」です。
米子と夜叉鬼 らんた @lantan2024
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