エピローグ

カイが消えた師範室しはんしつで、わたしはハルカと見つめ合っていた。


ハルカは自分がなぜ泣いているのか分からない様子だ。


わたしも何て声をかけて良いか分からない。言葉って不出来ふできだな。



           「……」 『……』



 ガチャッ!


 突然、部屋のドアが開く。 びっくりした!


 お父さん(道場どうじょう師範しはん)がドアを開けてうめいてる。

 「うぉっ!」

 完全に誰も居ないだろうと思っていたようだ。慌ておどろいてる。


 「……ハルカちゃん、いらっしゃい。 お久しぶり……」

 気まずそうに挨拶あいさつしてる。こんなお父さん初めて見た。


 「……今日は遅いから、うちでご飯食べていきなさい」

 なんか、夕食ゆうげに誘ってる。調子狂ちょうしくるうな。


 「は、はい。いただきます」

 食べてくんかい。 おばさんに連絡しなくちゃ。


 居間いまへ向かいながら話す。

 『弟に会うの久しぶりじゃない?』


 「あ、そっか。 もう中学生だっけ?」


 何気ない会話が始まる。 お父さんナイス!




 久しぶりに家でハルカと一緒にご飯を食べている。

 ハルカはわたしの弟やお母さんとも久々ひさびさに話している。

 当然、カイの話はできない。



 夕食が終わり、もう遅いからハルカは家に帰ることになった。

まあ、家は隣なんだけど。


 カイのこともあるし、色々あった。少し一人になりたいかもしれない。

何かあっても隣の家だしいつでも話し相手にはなれる。大丈夫だろう。


私も気になることがある。

 また明日。とハルカと別れる。



さて、

『おかあさーん、さきお風呂もらうねー』


「はーい、どうぞー」

わざと大きい声でやりとりする。弟どもも今は来るんじゃねーぞ。




 脱衣所に入り、ブラウスを脱ぐ。

スカートに手をかけて、手を止める。


 『餓鬼魂がきだま!いつまで見てる!』

 わりと大きめの声で言ってみる。


 脱衣所だついじょにカイの声が響く。

 「ひえー。なんで気づいたんですか??いつから?」

 せこけた鬼のようなが現れる。やっぱりな。


 いだブラウスで胸元をかくししながら話す。 

太極図たいきょくずがどうのとか言い出したあたりから』


 「ひー、最初からバレてる!」

 さすがミヤビさん!なんて言ってごまをする。みにくい。


 『なんでハルカをたばかったの?』


 うん、とうなずいてカイが語り出す。

 「ハルちゃんは僕に『じょう』を持ち始めてました。僕は自分がなんなのか分かっていませんが、人間とは住む世界がちがうことは間違いない。そのような存在に情を持つことは好ましくない」


 『カイは人間の善悪を理解しているの?』


 「理解はできますが、意味がありませんね。

。そんなハルちゃんが僕にじょうを持つことはお互いにとって不都合ふつごうなのです」


 気になることを言う。


 『そう思うなら、姿を消したままでハルカを見守って欲しい。

 カイなら、ハルカをとの縁から守れるんじゃないの?

 結局、わたしからカルマを回収するしかないんでしょう?わたしの役にも立ってほしいのだけど』


 「わかりました。ミヤビさんの頼みであれば、早速取り掛かりましょう」


 『……今すぐ行ってよ』


 「そんなぁ、なんで僕を追い出そうとするんですかぁ?」


 『……見て分からない?』


 「はいぃ」


 『お風呂に入るから出て行けって事!』





 湯船に浸かり今日あったことを思い出す。


 明日になったらハルカを友達に紹介しようかな。


 この子は私の姫だ!いじめたらぶっ飛ばすぞって。

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業魔と死にたい女子高生 どらぱん @dorapang

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