第9話 初狩は兎に決めた!

 で、査定を終えたベンさんが戻ってきた。


「はい、これが買取り明細よ〜。ブラッディウルフは状態が最高だったし大きさも良かったから過去最高額の買取価格になったわよ。アクビの実は一つ銀貨五枚は変わらないから3つで銀貨十五枚ね。但し依頼を受けた事にするって言うからそれにアクビの実一つにつき達成報酬の銀貨十枚がプラスされるから合わせて銀貨四十五枚ね。更に更に、ブラッディウルフも依頼があったからそれも受けた事にしておいたわよ〜。優しいワタシに感謝しなさい。ブラッディウルフは通常だと小金貨五枚〜八枚なんだけど、今回の個体は依頼にもマッチしてるから金貨二枚で買取るわ。それと依頼達成報酬として金貨三枚ね。全部合わせて金貨五枚と小金貨四枚と銀貨五枚、大金持ちになったわね、坊や。ワタシに今晩お酒を奢ってくれてもいいのよ〜」


 えっと街に来る前に聞いた話じゃ確か……


小銅貨  10円

銅貨   100円

小銀貨  1,000円

銀貨   10,000円

小金貨  100,000円

金貨   1,000,000円


 って脳内で変換したよな。って、俺って十八歳にして一日で五百四十五万も稼いだのか!!!


 フフフ、黒いもやよ、ホントに有難う。心から感謝しているよ。これで宿代の心配も無くなったぞ。


 俺がそう思ってたらシーナが言う。


「宿はうちで良いからね。宿代いらないから節約出来るよ」


 っていやいや、ダメだぞシーナ。さっきお友だちからって言ったんだから急に同棲とかは童貞にはハードルが高すぎる。


「勘違いしてるみたいだから教えてあげるけど、シーナの家は大きいから部屋が余ってるのよ。離れもあるしね。そのどこかに泊まらせてくれるって言ってるのよ」


 とレナから俺の心の中を読んだようにシーナの家について教えてもらった。やっぱり顔に出てたかな? しかしそんなに大きい家に住んでるならやはりシーナはお貴族さまなのか? レナもそうだよな?


「ふう〜…… まあチカラにならいいか。私はこの街を治めてる領主の娘よ。兄のゲインは三男なの。なので自分から領主権を放棄してハンターになったわ。私は次女なんだけど政略結婚が嫌でハンター登録したの。シーナの家はこの国有数の商家よ。爵位も持ってるけどね」


 レナの説明に納得した俺。なるほどなるほど2人ともやんごとなきお方だったのか…… すると俺も丁寧語で話すべきか?


「レナ様、ご丁寧なご説明をお有難う存じます。シーナ様、ワタクシの様な平民は宿ぐらしが性に合っておりますのでご提案は断腸の思いでお断りさせて頂きます」


「チカラ? 私たちのしらない所で変なものでも食べたの?」


「えーっ、友だちを家に招待してお泊りして貰うのは当たり前の事だよ」


 レナからは俺の超絶丁寧語を不審がられて、シーナからはお泊りに来いと迫られる俺。

 モテ期到来だな! いや違うそこじゃない。


「いやいや、平民の俺がお貴族さまの所に出入りなんて出来ないからな。それに宿暮らしもしてみたいし。だからいい宿を教えて下さい、ギルド長」


「それならうちのギルド推薦の宿である【狩猟人の巣窟】が良いぞ」


 いや、ネーミング!? 巣窟って!! 何か悪いイメージが湧くのですが…… だけどそこがオススメだと言うのであれば。


「そ、そうですか。【狩猟人の巣窟】ですか。分かりました、そこにします」


「おう、朝夕二食付で一泊小銀貨五枚と少し高いが、狩った食材を持ち込めば買取もしてるからお得だぞ」

  

 おお、それは良い情報じゃないですか。


 そうして俺は残念そうな顔のシーナや明日もギルドに顔を出しなさいねと念を押すレナと別れて今日から泊まる宿、【狩猟人の巣窟】に向かうのだった。


「いらっしゃいませ! お泊りですか? 食事のみですか?」


 宿に入ると心地よい声音の可愛らしい少女にそう聞かれる。お家のお手伝いをしてるんだな。偉いなぁ。


「お泊りで、よろしく。取り敢えず10日。これで足りるかな?」


 そう言って俺は銀貨五枚を出した。


「はい、ちょうど10日分ですね。有難うございます。お部屋はあの階段を上がって右に進んだ突き当りになります。これがお部屋の鍵になります。鍵はお出かけの際に預けて下さってもいいですし、お客様ご自身で持っておられても構いません。但し無くされると銅貨八枚を頂きます。朝食は午前5時から9時までの間。夕食は午後5時から9時までの間になります。お風呂は共同で午後3時から10時までなら入れます。お風呂場はあちらの階段を降りてすぐに脱衣所があるのでわかると思います。男女別ですから間違えないように気をつけて下さいね。他に何か聞きたい事はありますか?」


 スゲェ! この子何歳だ? 見た目は十一歳〜十二歳ぐらいに見えるけど。


「いや、有難う。特に無い…… いや、あった! 食材を持ち込めば買取してくれるって聞いたんだけど?」


「あっ、はい。お客様ハンターだったんですね。そうは見えなかったものですから。うちでは兎ならば解体をしてなくても買取します。他のボアや中型〜大型のものですと解体されたものならば買取可能です。兎は一羽を小銀貨三枚で買取してます」


 なるほどなるほど。ならば明日からは兎狩りだな。


「うん、良くわかったよ。有難う」


 俺はそう言ってからその少女の手に銅貨五枚を乗せた。


「えっ!? お客様、これは?」


「分かりやすく丁寧に教えてくれたお礼だ。少ないけど取っておいてね」


 俺がそう言うと少女は嬉しそうに笑いながらお礼を言ってくれた。


「有難うございます、お客様。もしもよろしければお名前を教えて下さいますか?」

 

「ああ、俺の名前はチカラっていうんだ。よろしくな、えーっと……」


「私の名前はチェムと言います。チカラ様、よろしくお願いいたします」


「うん、分かった。チェムちゃんだな」


 こうして俺は当たりの宿屋だーと嬉しく思いながら部屋へと向かうのだった。

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神の受け流し しょうわな人 @Chou03

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