第5話 黒き過去、白き未来(後編)

クロナと再会し謝罪した後、私達はクロナの部屋へ向かっていた

クロナの話したいことはあの場所では話せないとのことらしい


「クロナ、どこまで行くんですか?」

「もうちょっとよ」


歩きだしてから10分ぐらいである一室の扉が見えてきた


「ここは...」

「ここが私の部屋よ。さ、入って」

「は、はい」


部屋に入って飛び込んできたのは全てが黒で統一された少し重苦しい感じの内装だった


「真っ黒ですね」

「そうね」


そう言って私を部屋に招き入れて扉を閉じた


「それで、私に話したいことって。それとどうして死んだことになってるんですか?生きてるじゃないですか」


私は立て続けに質問した


「ストップストップ、順を追って説明するから...」


クロナは私を落ち着かせてから説明に入った


「シロナはこの施設を見てどう思ったか聞いても言い?」

「この施設をですか?」

「そう、率直な感想でいいの」


クロナの質問にシロナは施設中や施設にいる人達を思い出す。皆優しくて一生懸命だった姿が浮かんできた


「良い施設だと思います。施設の人は優しいし、孤児になった子供たちの面倒も見てくれてるようですし」

「...そうね。一見はそう見えるわね」

「...え?」


私はクロナの言ったことを一瞬理解出来なかった


「一見ってどういうことですか?」

「その目で見たら分かるわ」


そう言うとクロナは部屋の奥の扉を指差した


「そこの扉の奥に行けば真相が分かるわよ」

「...真相」


私は部屋の奥の扉の前にたち扉を開けた

そこに飛び込んできた光景は衝撃なものだった


「...何ですか、これ...」


私の目に写ったのは過酷な訓練や人体実験をされてる子供達、カプセルに入れられてそのまま培養液に沈んでいる子供達がいる光景だった

子供達は泣きじゃくり、悲鳴を挙げていた


「これがこの施設の裏の顔、本性と言ってもいいわ」

「い、今すぐ辞めさせて...」

「無駄よ」

「え...?」


クロナは私に歩み寄る


「これは過去の映像なの」

「映像...」


クロナは流れている映像の前まで来て話を始めた


「私は、この惨劇を起こさせないために数年前から行動してたの」

「起こさせないためって、過去に実際起こってるじゃないですか」

「そうね、あなたの言う通りだわ」

「そもそも、この映像はなんなんですか?」

「これは、子供達の能力を兵器にするためにやっていることなの」

「能力?兵器?」


私は訳が分からなくなっていた

そしてクロナは再び説明を始める


「...数年前ぐらいだったかしらね、一人の男の子が川に転落する事故があったの」


私は一旦落ち着いてクロナの話を聞き始めた


「川に落ちた男の子はパニックになってそのまま流されていて、流れが早かったせいで周りの人達は助けにいけないでいた」

「そんな...」


その男の子はこのまま助からないのではと私は思った

しかし、次にクロナが言ってきた台詞は予想外のものだった


「皆男の子がこのまま助からないのではと思ったわ。でも流されて数分後に奇妙なことが起こったの」

「奇妙なこと?」

「ええ、その流された男の子、どうなったと思う?」

「え?そのまま下流まで流されてしまったんじゃ?」


私の回答にクロナは首を横に振り、答えた


「いいえ、男の子は水の上に立っていたの」

「え?」


予想外の答えに私は耳を疑った


「水の上に立つなんてそんな...」

「でも、事実よ」


クロナはその結果の映像を私に見せてきた


「ほ、本当だ...」

「この出来事をきっかけに世界中でこういった異能の力を発現させる子供が現れたの」


その後水の上に立った少年は水を自在に操れるようになっていた


「それで兵器というのは...」

「その異能の子供を戦争の兵器にするのよ。ここの連中は」

「そんな、だってここの人は差別を無くせるよう頑張ってるのにそんな非人道的なことをするなんて...」


正直クロナの言葉を信じたくないでいた、さっきの映像も何かの作り物なんじゃないかと思いたくなるくらいに

しかし、クロナの目は冗談や酔狂ではないと主張していた


「じゃあ、差別を無くすという目標もただの建前...」

「あ、差別を無くすっていう目的は合ってるわよ」

「ほ、本当に?」

「ただ手段は、軍事利用出来る異能者の力を使っての制圧という形になるわ」

「それは、差別を無くすことになるんでしょうか?」


私はもっと平和的な手段を模索しているものだと思っていた

人を兵器に利用し、その力で差別を無くす。私はその考えは間違っていると思った

そしてクロナは説明を続ける


「私もシロナの意見には同意よ、そんなことで差別を消しても意味がない」

「そうですよね」

「だから私はこの数年間、自分を死んだことにして仲間を集めてたの。死んだと思ってくれてた方が色々動きやすいから」

「そうだったんですか」


私は思わず納得した


「それでシロナ、私達に協力してくれない?」

「協力...私記憶ないから協力なんて...」

「それは、分かってる。でもあなたの協力が必要なの」


クロナは真剣な顔で私に話してきて、私は少し気圧されてしまった


「な、何で私なんですか?私記憶がないのでクロナの言った能力とか使えないですよ」

「それは...」


クロナは言葉を濁して後ろを振り向いた


「...一月後、私たちはこの建物で暴動を起こす。それまでに心を決めておいて」


クロナは表情を見せず私にそう言った


「クロナ...」


その後、私はクロナと共に自分の部屋へと戻っていった

道中、お互い一言も話さず少し重い沈黙だけがその場に漂っていた


「それじゃ...」


私の部屋の前に付くとクロナはそう一言い残し去っていった

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白い私と黒いあなた @Neshia

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