第一話 若葉と学校と
学校についたら、学年の共有スペースの机を使ってユキによるヒマワリのための勉強会が始まる。
俺と紅葉は理解しているが、復習がてら話に耳を傾けた。ヒマワリに教えるのは大変じゃないんか?と、ユキに聞いてみたことがあったが、アウトプットできて自分も勉強になると言っていた。さすが、学年トップ様は違うぜ。
一時間目が始まる十分前に解散となった。
ヒマワリはいまだにすべてを理解することはできなかったが、少しはできるようになっただろう。
クラスは、ユキとヒマワリが一組、紅葉と俺が三組だった。
朝のちょっとした時間を勉強をして過ごし、一時間目の授業の準備をする。準備といっても、自分のロッカーから教材を出してくるだけだ。そんなに、時間はかからない。
授業開始五分前には準備を終え、隣の席の松本と話していた。
「なぁ、若葉、今日もプリンセスかわいいな」
「松本、そのあだ名を使うと殴られるぞ。今日の朝なんて、寝起きからくらってるんだから。。。」
「それ、ご褒美じゃねーか」
「お前、本気で言ってるのか?」
「え?なんで?」
「まじかよ。。。」
「かわいい子に触ってもらえるんだぞ。それだけで、俺は幸せなんだ。だから、殴られることご褒美なのさ。」
松本は、彼女どころか女友達さえうまく作れない人種なのだ。
だから、ゆがんだ考えになってしまったんだ。かわいそうだと毎回思ってしまう。
先生が教室にきて授業が始まった。
午前中の授業はいつものように過ぎていき、お昼の時間となった。
お昼はいつも、紅葉、松本、俺の三人で食べている。
「プリンセス~、一緒におひブヘッッッ!!!」
紅葉の綺麗なパンチが決まった。しかも、みぞおちに。
「うわ、綺麗にはいったな。松本、変態だけど面白いやつだったよ。合掌」チーン
「ま、まだ、死んでないって。。。。やっぱ無理かも」
「ごめん、そんな強くパンチしたつもりはなかったのに。ほんと、ごめん。」
「いや、あだ名で呼んだ松本が悪い。ドンマイ、松本」
まだ、苦しそうだが大丈夫らしい。
紅葉と俺で、机を動かし三人の食事スペース作る。松本は椅子に座ったまま動けないでいた。いい感じに決まったんだろうか。
お昼の時間は、いつもこの三人で食べている。
たまに、一組からヒマワリとユキが来ることあるが、週に一回あるかないか程度だ。
「若葉、ヒマワリちゃんとはどうなんだよ?」
松本が、サンドイッチを食べながら質問してきた。
「どうって何が?」
「こくったりしないのか?」
「昨日、なに読んだ?」
「愛してるゲームを終わらせたい」
こいつ、幼馴染ってだけでつなげてきただろ。
「あー、その作品ね。第一に、愛してるゲームはしてない。そんで、告白なんてしたら気まずくなるだけだろ。俺は、今の関係が心地いいんだよ。」
「ヒマワリちゃんは、付き合ったりしたいかもよ?」
「それは、ないだろ。あいつは、男より陸上をとる人間だ。そもそも、付き合って何をするんだ?」
「。。。キスとか?」
「照れながら言うな。お前がやっても気持ち悪いだけだぞ。」
このオタクはすぐに現実と二次元をごっちゃにする。悪い癖だ。
ロシデレを読んだ次の日にロシア語の教材を持ち歩いてるのは、面白かった。
「キスか。。。」
「紅葉、こっちを見ながら言わないでくれ。」
「べ、別になんでもないよ。」
火照った顔をするな。ほんとに、男なのか疑いたくなる。
こんな容姿でも立派なものがついてるんだ。落ち着け、俺。
「幼馴染と付き合えるのは、二次元だけなんだよ。いずれ、接点が少なくなっていき、会うこともなくなって、気付いたら疎遠になってる。ってことのほうが当たり前。数年たって結婚したって親から聞くのがおちだろ。」
「夢を壊すなーー---!!!」
「僕は、ずーっと一緒にいるからね。だから、寂しいこと言わないでよ。」
この紅葉の潤んだ目はずるい。この子を守りたくなる。
「紅葉、いいやつだな。」
「えへへ」
かわいい。とてもかわいい。紅葉を嫁に迎えると決意した瞬間だ。
「私は疎遠になりたくないよ。」
今にも泣きそうな顔でこっちを見つめているヒマワリがいた。
「げ、なんでいるんだよ。」
「教科書を借りに来たんだけど、、、、
私と疎遠になりたかったんでね。。。。」
やばい、半泣きだ。ヒマワリの喜怒哀楽はすぐに顔に出てしまう。
「ヒマワリ、ごめんって。別にヒマワリと疎遠になりたいとかじゃないから。一般的な話をしただけだから。」
「私たちは別?」
「そうそう、別だよ。」
「いつものしてくれないの?」
「はいはい」
ヒマワリが悲しむときは頭をなでるのが習慣になっている。
小学生の時からの恒例だから仕方ない。でも、思春期にもなってこれをやると意識しざるを得ない。ただ、ユキにもやってもらってたことがあったので、誰でもいいのであろう。
「若葉、ありがと。」
ヒマワリは、頭を撫でてもらっているときは、犬みたいになる。かわいい。
満面の笑みのヒマワリが好きだ。悲しい顔をしてほしくない。
「ごめんね、紅葉。若葉とのこれはおまじないだから、若葉をとったりしないから許してね。じゃ、また、一緒に帰ろうね~」
そう言って教室から出て行ってしまった。
「「「???」」」
三人とも、頭の上に?がでてきた。ヒマワリの頭を撫でるのは見慣れているが、最後の言い残していった言葉が理解できなかった。
「あいつ、教科書はいいのかよ。」
五限目の授業は現代文だが、ロッカーには教科書の代わりに付箋がはってあった。
『参上 おぬしの教科書はいただいた by怪盗ヒマワリ』
仕方なく三組まで回収しにいった。
教科書を借りに行って帰ってきたヒマワリちゃんの様子が明らかにおかしかった。
二ヤけながら帰ってきた。しかも、耳も赤くなっている。
これは、桜木くん関係かしら?
「ヒマワリちゃん、なにかあったの?」
「なにもなかったよ」
「ほんとに?例えば、桜木さんとかと」
「な、なにもなかったよ」
顔を見ればすぐにわかる。あぁ、推せる。
確定で桜木さん絡みだ。
「教科書を借り忘れるくらい動揺してるのに?」
「あ、忘れた。。。もう、勝手に借りちゃえ!」
付箋に何かを書いてまた走って行ってしまった。
借りてきてすぐに桜木さんが回収しに来た。ヒマワリはまた少し耳が赤くなっている。
なぜ推しカプが誕生しないんだろうか?
ユキの謎はいまだに解けない。
喜怒哀楽のヒマワリちゃん @kugono95
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