第7話 ほおら……
泣きなや。ええ大人が、格好悪い。
アンタが死んで地獄に落ちるんなんか待ってられへん。ウチが自分で殺したるわ。簡単には死なさへんで、爪全部剥(は)いでから指切り落としてちょっとずつ輪切りにしたる。アンタがウチにしたみたいにちょっとずつゆっくり殺したるわ。
お面取って顔見せたろか、アンタにぐちゃぐちゃにされた顔を。自分がどんな非道い事したか見てから死ね。
あはは。
何ガキみたいに震えとんねん、ほんま傑作やな。そんなに死ぬんが恐いか。ウチも死ぬん恐かったわ、痛かったわ、悲しかったわ。
ほら、覚悟しいや。
……。
なんてな……。
もうええわ、帰りぃや。
え、やっぱりアンタを殺すんやめる。うん、ほんまやで。もう
だって面白いもん見れたし。
ウチ、色々アンタへの仕返し考えててんけどな、ただアンタを殺すだけやったら物足りへん思ってん。
せやからアンタの目の前でアンタの一番大事にしてるもの壊してからアンタ自身も殺そう思っててんな。
それでお茶屋さんのお姐さんに相談して飛脚のおっちゃんに持って来て貰ってん、アンタの一番大事なもの。
そや、最後に一つだけ教えといたるわ。あんな。ウチ、アンタに一個だけ嘘吐いてる事あんねん。
何やと思う?
……。
実はな……
……そらくらいなんておらへんねん。
そやで、そらくらいなんか全部ウチの作り話。飛脚のおっちゃんもほんまはそらくらいに喰われたんじゃなくて処刑された人やねん、大昔にな。
あれ、どうしたん。
また顔真っ青なってるやん、しかも手ぇまで震えて。あ、もしかして分かってもうたか、自分が何やったかって。
ええと、美優ちゃんやっけ?
ウチらが騒いでもお利口さんやからずっと寝とったなあ、すやすやと。さっきのお茶屋さんにおるときもずっと大人しく寝てたらしいで。ほんまお利口さんやわ。
違うなあ…。
やっぱ……そらくらいはおるわ。
嘘を喰って育つ生物……。
アンタはウチを殺したん隠して生きていくつもりやねんやろ、小学校の先生しながら。嘘で塗り固めた人生。そうやってアンタは美優ちゃんを育てるつもりやん。美優ちゃんはアンタの嘘で作った生活で稼いだお金でご飯食べて大きくなるんやろ。
ほら、美優ちゃんはそらくらいや。
やっぱり……
……麻袋の中におったんは、そらくらいや。
うふふ、なんちゅう顔してんのアンタ。
それよりこの麻袋見てみいや。酷いもんやで、泥だらけやし穴だらけ、おまけに穴からはどろどろ赤い汁が垂れ流しや。しかも、臭いなあ。
誰が……こんな事したんやろ。
さっきまでは時々ごそごそ寝返り打ったりしとったのに、もうぴくりとも動けへんなあ。あぁあ、だんだん冷めてきてるで。
ちょっと袋開けてみようや、どんなんなってんねやろな。触った感じやけど何かどっかが千切れてるっぽいで、何か取れてるもん。何やろ、耳かな指かな。
よっしゃ、開けるであけるでぇ。アンタもよう見ときや。目ぇん中入れても痛くないぐらい可愛いんやろ?
あ、出て来た、出て来たわ。うふふ。
ほおら……。
そらくらい 可本波人 @kamohat
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