君のためにやってきた、ママとパパ
ビービービービーッ。
けたたましく鳴り響く警告音で目が覚めた。
コックピット内が警告のランプで赤く照らされる。
何が何だと回らない頭で、目の前のモニターを見ると敵機接近の警告文が表示されている。
ロックされているぞ!、と搭載のAIが馴れ馴れしく怒鳴っているが五体満足ならない機体でどう回避しろというのか。
しっかりしろ、まだやられちゃいない!
AIの声か、自分の声か、それとも通信先の上官か。
誰の声とも判別つかないが、その言葉で自機がまだ何の損傷も受けていないことを認識する。
何だ、夢でも見ていたのか?
最後は迎えが来るとはいえロクでもない夢だ。
機体の損傷具合からして最悪を想定していた上での夢か、それとも宇宙空間で未来予知に目覚めたか。
正気を取り戻し機体を動かす。
AIの指示に従い上半身を横に反らすと、前面のモニターにバズーカの弾が通り過ぎていくのが見えた。
実際の映像を頭部カメラで撮影したのち、コンピューターでバーチャルに再現しなおした映像なのだとか、訓練施設で聞かされた気がする。
指導官の目を盗み欠伸を浮かべて聞いていたが、そこに僅かながらの誤差が生じることだけはハッキリと覚えている。
一呼吸、一秒、誤差に対して訪れない衝撃。
当たっていない、避けれたのか。
そう安堵するのも束の間、次のロックオンを警告する音。
当たり前か、一撃で助かるなんて戦場ではあり得ない。
今度はAIの指示より早く機体を動かす。
訓練施設で何度とやったシミュレーターを思い出す。
こっちが訓練施設上がりなら、向こうも同じ訓練施設上がりだろう。
昔々に戦争を経験した老兵は、宇宙の戦争についていけるほどタフではなかった。
欲されるのは何処の国も新兵だ、宇宙戦争用に仕立てあげられた商品だ。
地上戦に慣れた者ほど、宇宙は遠くなっていく。
二撃目も避けれた。
しかしながらやはり安堵する暇などは訪れない。
避けてばかりの防戦一方では、いずれ夢と同じ結果になってしまう。
未来予知というのは、規定路線というわけではないのだ。
まずは牽制の一撃。
機体が右手に持つ、マシンガンのトリガーを引く。
機体とパイロットの認識齟齬があってはならないと、コックピット内にあるトリガーも重さを感じる仕組みになっている。
弾が排出される度に揺れる腕、人差し指に力が入る。
前面に広がる宇宙空間、肉眼では捉えることは出来ないがモニターに映るレーダーには射程内の敵影が点滅していて、表示されるロックオンサイトに合わせてトリガーを引いていく。
宇宙空間を縦横無尽に飛び回る敵機。
それを追いかけ、マシンガンを掃射していく。
追いかけ、掃射、追いかけ、掃射。
前面モニターに映る宇宙空間。
全天周囲モニターの足下部分には、月面が映り込んだ。
ああ、そういえば、月で追いかけっこしていたんだな。
状況を思い出す。
月面基地の争奪戦。
仲間数機と敵機に遭遇するも、偵察情報よりも多く配置されていた敵機。
仲間の奮闘もあったおかげで、こちらは自分一機に追い込まれたものの敵も残り二機にまで追い詰めれていた。
二機?
しまった、誘われていたのか。
そう気づくや刹那、モニターにロックオン警告音。
AIが注意喚起する馴れ馴れしい台詞を吐いてる途中、ぶったぎるように光が上から落ちてきた。
ビービービービーッ。
機体を大きく揺らす衝撃に、脳震盪を起こしかけて一瞬意識が薄らぐ。
次に来る吐き気をどうにか我慢して、何が起きたかと確認するとモニターに映る機体の様子に
武器を構えていた右腕が肩からもがれた。
一撃でかよっ!、と驚く時間もまともにくれない続いての警告音。
鬼ごっこ、鬼役の交代。
追いかけ回してた敵機が勢いよくこちらへと接近する。
二機で挟めるなら接近戦。
弾薬の消費は金がかかると口酸っぱく言われたのだろう。
どの国も財政事情は世知辛い。
AIの指示に従って距離を開ける為に、後方に下がろうと動かした瞬間。
時間差で爆発する、宇宙空間に放り出されたマシンガン。
爆発の衝撃に当てられて、予期せぬ方向へ機体は流される。
オイ冗談だろ、と機体の制御に四苦八苦。
そこへ背面上部から空を薙ぐ音が聞こえる。
無音の宇宙空間の何を再現したのか?
モニターに映る、上から襲撃する敵機。
マシンガンの爆発に流されてなければ、その手に持つ斧に機体の頭部は真っ二つにされていただろう。
こんな時代に原始的な物を持たされてるな、お前の国は!
偶然救われた命に感謝しつつ、二機同時の攻撃に対処しなければならない危機を実感する。
大丈夫だ、落ち着け!
反撃の手段は何だ!?
モニターに指を這わし、画面を切り換える。
そこには親切丁寧に並ぶ武装リストと、
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