ドーナツ食べたのだぁれ?

 お城を冒険中、厨房で山盛りの揚げたてチョコドーナツを発見した。


「おお〜っ !?」


 これはテンション爆上がりですなぁ〜!


「一個だけ、一個だけ……」


 くまおじさんに見つかる前に、一個だけ食べちゃお。

 一個だけだったらバレないよね?


 私は背伸びをして、テーブルの上にあったドーナツを一つ手に取った。


 ハァ〜!

 なんとかわゆいフォルム!

 ドーナツって、なんで真ん中があいてるのかなぁ?

 でも確かに、あいてる方が絶対美味しいと思うんだよね〜。

 

 むしゃむしゃ……


 う、うまー!!!!


 私は頬いっぱいにドーナツを詰め込んで、もぎゅもぎゅと砂糖の甘い味を堪能したのだった。


     *


 オズワルドが厨房からチョコドーナツがなくなったと報告を受けたのは、つい先程のことだ。

 たくさん揚げたので、姫のティータイムにみんなで食べようと考えていたらしいのだが、ドーナツは綺麗になくなってしまったらしい。


 さて。

 犯人の目星はついている。

 なぜならオズワルドの目の前には、口の周りをチョコレートでベタベタにしたプレセアが、ソワソワしていたからだ。

 まあ、犯人は明白だろう。

 悪戯をしたときはいつもこうなのだ、この子は。


「魔王さま〜!」


 プレセアはひしっとオズワルドの足にしがみつく。

 それから顔をあげると、ニコォと笑った。


「魔王さま、いつもかっこいいね、お仕事できてすごいね!」


「……ほう?」


「魔王さま大好き!」


 そう言って可愛らしく甘えてくる。

 あざとすぎるが、それでも可愛くて、つい抱き上げてしまう。


「ところで聞きたいことがあるんだが」


「ん?」


 なぁに? 

 とキュルンキュルンした目で聞いてくる。


「厨房からチョコレートドーナツが消えたそうだが。何か知らないか?」


「〜っ!」


 プレセアは途端に目を白黒させ始めた。

 口周りをチョコまみれにしながら必死に言い訳を考える姿に、オズワルドは怒る気が失せてしまい、喉から漏れ出そうになる笑いを咬み殺す。


「えっと、えっとね……ドーナツはぁ、知らないかも?」


「へえ?」


「うゆっ!?」


 ほっぺを指で挟むと、プレセアは目を見開いた。


「嘘つきな悪い口だ。甘い匂いがする」


「〜っ」


「この口の周りについたチョコレートはなんだ?」


 そう言うと、プレセアは絶望的な表情になったのだった。


     *


 結局ドーナツを全部食べてしまった私は、魔王さまに叱られてしまった。

 ぶりっ子して乗り切ろうと思ったけど、魔王さまにはバレバレだったみたい。厨房に連れていかれ、みんなの前で謝罪させられた。


「本当だ、ほっぺにチョコレートついてるな」


 くまおじさんがそう言って笑った。


 ぬあああああ!

 拭うの忘れてた!


 慌てて服の袖で拭こうとすると、その前に魔王さまにハンカチで拭われた。

 完全に幼児扱いだ。


「うー……ごめんなさい……ドーナツ全部食べちゃった」


「全部!? あの量をか!?」


「うん……美味しくて……」


 モリモリ食べちゃったよ……。


 みんな私がドーナツをどこかに隠してたんじゃないかと思っていたらしく、仰天していた。うんうん、胃の中に隠してたらそりゃあ驚くよね。


「おいおい、そんなに食べたら体に悪いぞ。今日からちょっと食事のメニューを調整するか」


「ふえええ!?」


 どうしよう、ごはんが全部野菜になっちゃったら!

 私が慌てていると、魔王さまがくすりと笑った。


「いいじゃないか。お前は好き嫌いがないんだから」


「でもお肉は食べたい〜!」


「じゃあもう盗み食いはしないことだな」


「ううう……もうしません。本当にごめんなさいぃ……」


 こうしてしばらく、私の食事は野菜モリモリ★お子様セットになったのだった……。

 


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聖女ペットの番外編 美雨音ハル @andCHOCOLAT

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