第8話最終話「知〜〜らない」


「ということはやっぱりあの女子大生は偽称聖女ってことね。

 人に冤罪をかけて追放するような人間が聖女なわけないと思っていたのよ」


となると女子大生が私を追い出したのは、日本での彼女の行動を私が王子にチクるのを懼れたからかな?


彼女は見るたびに違う男を連れて歩き、道端だろうがマンションの前だろうが、ところ構わずイチャイチャしていた。


王子や周囲にそうと知られたら、聖女の神聖で清らかなイメージがぶち壊しだ。


女子大生が私の口封じをしたくなるわけだ。


だからといって彼女には全く同情はしないけどね。


「聖女召喚にどれだけお金をかけたのかな?

 広い部屋を押さえて、魔術師を雇って、でっかい魔法陣を描いて……。

 それらの費用は国民の税金で賄われているんだろうな」


王子が聖女を召喚したってことは、この国には聖女を召喚しなければならない差し迫った事情があるのだろう。


聖女として召喚されたからには、この国のために尽力しなければいけないんだろうけど……。


私の脳裏に召喚された部屋での出来事が甦る。


私を見下しあざ笑っていた女子大生。私を追放した王子。私を罵倒し谷底へと突き落とした白いローブの男達。


思い出すとムカムカしてきた。


「止〜〜めた。

 この国を助けるなんて絶対やだ。

 助けるとしても一番最後に回す!」


私は異世界生活二日目にしてこの国から脱出することを考えていた。


漫画や小説のヒロインは、相手がどんな非道なことをしても相手の罪を許し、減刑を願う。


女子大生と王子と白いローブをまとった連中の減刑か……私にできるかな?


しばらく考えたが私には彼らを許すことはできなかった。


「うん……私には無理!

 本物の聖女だって名乗ったのは女子大生だし、女子大生の言うことを信じて私を追い出したのは王子と白いローブの連中だし。

 彼らがどうなっても知〜〜らない」


これが小説の中なら私はヒロイン失格ね。








こののち女子大生になんの力もないことが分かり、聖女召喚の儀式に莫大な費用を費やした王太子は民衆の怒りを買い偽称聖女の女子大生とともに処刑台にかけられた。





――終わり――




もしよければ★から評価してもらえると嬉しいです!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【完結】「異世界に召喚されたら聖女を名乗る女に冤罪をかけられ森に捨てられました。特殊スキルで育てたリンゴを食べて生き抜きます〜ついでにもふもふとの生活を楽しみます〜」 まほりろ @tukumosawa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画