5 指輪魔術師の冒険

「おーい!指輪のあんちゃん!」

 俺たちがヤデム・エリムの門を出て間もなく、馴染みの鍛冶屋のおっさんが追いかけてきた。おっさんは汗をぬぐい、息を整えると、黒っぽくて四角い箱のようなものを差し出した。


「まあ聞け、あんちゃん。これはな、ヤデムの鍛冶台という魔法の作業台なんだ。」

 俺とラルフはその鍛冶台とやらをかわるがわる持って、見まわした。

「この鍛冶台はな、鍛冶神ヤデムの神官であるわしらが与えられる魔道具で、魔法の火で物を作ることができる。もちろん、指輪もな。あんちゃんみたいな魔術師には初めて会った。これはわしら一同からの贈り物だ。」

「でもおっさん、いいのか?」ラルフが尋ねた。「二人とも鍛冶師じゃないけど。」

「いいのだ、いいのだ。わしらで協議した結果、是非にということになった。健闘を祈るぞ。ただまぁ、複雑な工作にはわしらの腕が要る。またここにも寄ってくれ!」


 俺たちはおっさんに感謝し、また歩き出した。ヤデムの鍛冶台を手に。


 このようにして俺は、絶望から復活した。

 声を奪われたが、魔術師の力を取り戻した。新しい師と、仲間にも巡り合った。


 俺は今、闘志に燃えている。学ぶことはまだ多いが、今や前方には希望が見えている。古代の魔術を解明し、冥王ダーク・ロードアンガリムに復讐する。そしてもし叶うのなら、あのとき引き離された仲間たちにもう一度…。


 指輪魔術師ショーキは、声にならない雄叫びをあげた。


 やってやるぜ!



 完

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いっぱい嵌めて宝石を叩け!指輪魔術伝説 ~入門編~ SUMIYU @sumiyu

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