2. 思い出した!
「オギャアアア!…」
勢いの良い 高く、大きな声が古民家と見える部屋の中に響いている。
何らかの安心感のある女性が持つは絹のような布に包まれた薄々と黒い髪の生えた赤ん坊で、その周りに筋骨隆々の男性が佇んだり、黒い服の助産師達が居たり…。
どこかで見たことある様な囲まれた光景だがモヤが掛かったように思い出せない。
「泣いたわ~ アナタ~ !」
なんだかうれしそうに女方が話をしている。
なにが起きているのか理解できなかった赤ん坊は抱えられながら、男の方に小さな手を、無意識のうちに向ける。
「あら、パパの方がいいのかな…??」
なんだかムスッとして女性が頬を膨らます。不機嫌そうな顔だが怒りの感情は欠片も感じれず、愛情でいっぱいだった。
数分味わってから渋々といった感じで、その女性は絶対に落とさぬよう赤ん坊を腕で包み 鳥とその子供の口移し の様にして男に渡して、、
「うおぉ~ ! ママそっくりだなぁ!!」
やはりこちらもとっても嬉しそうにして、その感情のあまり高い高い~っと言わんが天に近づけてみる。
「ちょっと…! 危ないでしょー!」
女性が言う。やはり怒りは感じない。
//~神界~
春の終わり、特定の花々が散り始める頃 田舎町に住むハイルというあたたかい家庭に一人の少年が生まれる。その少年がこの家に生まれたのが運命か必然か…?
そんなことはだれも知らない…、適当に飛ばしたから神ですらわからない。
「っ…よしっと…」
不思議な力で 手をかざした前にステータスモニターの様なものが飛び出てくる。
最終点検をしているようで、以前転生者を送ったのは70年前。久しぶりの扱いのせいか少しモニターの手取りが怪しくなりながら 「なんだかいろいろな数値がおかしい。」という事実に気づく。
「アッ…、あ…リセット忘れてタ!!!」
えへへ!!と元気出せばいいってモンではないとわかっているけど転生者へのステータス調整を忘れていたことに気付く。
多くの場合は弱者が転生し成長し、強者となる。
だが強者が弱者になる、ましてや成長の可能性があるなんて事態は、この神は経験をしたこと、させたことなど無かった。
それにお気に入りだし…。
「(いや、転生の転生とかしたことないし… 半世紀くらい転生術使ってなかったし…。ね、うん…。)」
そうだうんうん、と自分でなだめて よしよし してやる。
『一つの事に複数回 世界に干渉すると天の使いがやって来る。』っと、誰から聞いたわけではないが何故か身についている知識があって、彼を訂正するわけにはいかない…と一応 腹を括る。
いそいそと自分も遷る準備を始めてみることにしよう。
//
出産、子育て、子の扱いに慣れてきたであろう秋に移る。
赤ん坊はキッチンから消化の良さそうなお粥と、全然関係のない炒め物のいい匂いがしてくる事に気付いて上質な布を敷かれ寝かされていた机の上からハイハイと動き出して 遂に机の角から床へ滑り落ちようと_。
「ほ~ら、ご飯が出来るよぉ~、ドゥワッ!!! 危ない…!!!!!」
鬼のような顔になって、咄嗟にお粥を混ぜていたおたまの様な…というかそれだが、おたまを粥入りの鍋から取って杖のようにして大きく叫ぶ。
「波ッ!!!」
魔法…というかド根性だが、家のどこかから型にはまらない何かが集まり赤子を宙に浮かばせる。
子供は生まれてすぐは魔力が無いものとされているが、母の魔力が一瞬で我が子の身体を駆け巡って、突如として宙にフワフワ固定されたまま白い光を発し輝き始める。
光る赤子なんて聞いたことはないしありえない。まるで死ぬ瞬間に力が溢れ輝いたという童話の国王の様だ。
まぁ、その王がこいつなのだが。
光り輝いた瞬間赤ん坊は転生によるショックで忘れていた今までのすべてがフラッシュバックし還って来る。 そして白い光りが止んだ後、お次は七色の光やそれぞれの模様が天から民家に赤ん坊に、ブチ降り注ぐ。
『最初の無、火、土、雷、水、風、闇、光』前世で忘れていった、たくさんの光が自分の中に入ってきて、
ダダダ、と大きな足音がしてドアを思い切り蹴飛ばし開けて全員の無事を確認しようとする男性が入ってきた。
「大丈夫かーッ!! メルバムゥー!!!」
あの恐ろしい光は家の窓から零れていたらしく、血の気の引いた顔で稽古用の木刀を持っている。
「なんなんだあの降り注ぐ光はッ…!!! おい!?」
虹の柱は家の外から、本当に天から降っているようであったようだ。
ちょうどメルバム、つまり赤ん坊の母に目をくれた時には虹の柱はすべて赤ん坊の中に納まり、光も完全に引いて メルバムの腕の中に入っていくところだった。
「いや、特に何もなかったわよ?ね?」
赤ん坊に母メルバムは あ然… と言った顔で言ってやる。
「冗談きついぞオイ、」
苦しい妻に苦笑いしながらとりあえず安否が確認できた様で安心し 木刀を机の上に投げ置いて妻子を腕の中に包み込む。
「ぱ、マ…、(あ…まだ喋れない)」
赤ん坊は声を発する。 心は成長しきっても、体はまだ追い付いていないようでまず言葉が話せない。
幸い前世と同じ訳の分からない言語の様で、前世序盤の苦労を思い出す。
「あうあうあー…(腫れ物扱いされたっけなぁ…、うん…。)」
感傷に浸る赤さん。そんなの今までいただろうか。いやわからん。
そんなこと考えている間に筋肉ダルマとでっp…、いやでっかい おかあさんはキャッキャウフフ、ドアをくっつけろだの、汚い剣を卓上に置くな、だの…。
//~神界~
「ふわぁ~ぁ、進捗どうなったかな、っとぉああ!!!!!」
一人、浮くバトル漫画の帝王のポッドの様な物に座っていたが驚いて立ち上がり、ただでさえ常人以上だったステータスは突如として80年くらい修行した後の仙人の様な数値に。
「(あれっ、ぼくよりつよい。。)」
「あっ…もしかして
自分のミスを自分でえぐって、
死後まで見込んで彼はこの能力を…?と、なんだか過大評価の癖が入って再び彼を見直してしまう。
//
家にて
「(不自由な体だなぁ、)」
ある日、窓から外を見る子供在り。
蝶が舞うほど、雲の無い良い天気で…「(冬なのにちょうちょ?)」っと蝶が気になってしまうほどの精神に復活しているわけだが…こういう風に外見たり、何か色々な事をして自分の成長を試していくのも悪くないなぁ、なんてぼーっとする。
「どうしたのー? ヴィクトーリャ…?」
母 ハイル・メルバムが微笑んで、撫でて話しかけてくる。保護者の気持ちは確かにわかる…が、ずいぶんべったりな気もするようなしないような…。
_そういえば自分の新たなる名前はハイル・ヴィクトーリャで、父の名前はハイル・ヴォロニン…と言うらしい。
力が満ちて、記憶が戻った日から日に日に得れる情報は増えていき、理解できる事が沢山になった。
まず、父は王宮兵の退役将校らしく、目付役として時たまに家を出て王国に出向き兵を鍛えているらしい。
そういえば自分は聞きなれているが一応紹介しておこう、王国の名は『ロトルク王国』!
まぁ、それなりの王国だった。 死後、数百年は経っているだろうし、今は知らん。
母は元冒険者で、魔道具使いだったらしい。今の夫と昔の家から駆け落ちして、この田舎にいるそうでなんだか大変そう?。
無属性の何かを使われたが、あれはいったい何なのだったろうか、あとで調べよう。
「おっぱいにしまちゅかー!」
母メルバムさん、それはちょっと…いやでもありかも…??
窓辺から自分は体をぶんどられて、だっこ。
「だ~!!」
ヴィクトーリャはとりあえず何かしゃべる。
「あぁ、そーう! そうしようね~ 」
抱きかかえられて…、そのまま…。
「(魔法や技も早く見てみたいなぁ…、うほほ!!!)」
横に仰向けに抱かれてから まぁ養分ですから、母乳だって。と諦めて…?喜んで?
力強く吸った。
つづく
転生して、転生する(元)王の戯言 小説家AT @Bikkurichicken
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