転生して、転生する(元)王の戯言
小説家AT
再起編
1. 久しぶり
「…父さん!! まだ言い残した事が沢山あるんだよ…!!!」
「陛下~ッ!!!!!!」
「パパ、」
自分が横たわる傍らにはたくさんの人が居て、
寝室に鎧の如何にも男臭い騎士が泣いている。
手塩をかけた、我らが可愛い家族が、息子のフィリップスが嘆いている。
秘書や侍女いろいろな人が居る。
どれもこれも私のベッドに顔を押し付けて…暑苦しい、まだここに居るのに…。
「(そういえば、近親者のみにしてくれって言ったのに…。)」
目を半分見開いて、周りを見てみれば…、全然関係のない他所の商会人までも遠く部屋の片隅にいる。
「俺、立派な王になるよ父さん…、あとそういえば俺交際させてもらっている人がいるんだ…」
「、…あとは頼んだぞフィル、え? 交際?!! お”ッホ… 」
思わずムクっと起き上がり、吐血混じりの咳を払って
大勢が驚嘆の声を上げ王を、私をベッドへ抑えようと私の胸に手を添え(やが)る。
「それ…、今じゃないだろう…ねぇ。」
息子を見て掠れた声で言ってやると暖かな笑いが起きる。
「(ああ、良い人生だった…。)」
瞼を瞑って。静かなる死『衰弱死』の体験がこっちの世界になるなんてな と苦笑って、その笑みを理解するものは誰一人とこの場にはおらず__。
//
この男「ハインリッヒ・ドゥ・モリトゥマ」は転生者であった。
享年69歳にして、一国の王。前の世界では18歳の工業高校生だった。
前世では祖母の 300万にも昇る筈のオレオレ詐欺を阻止してやり、そのまま悪い団体は通報され芋づる式に捕まり壊滅。その団体の受け子の少年の恨みを買い夜道、後ろから刺されて亡くなった男である。
ただ死んでから、彼の人生は昇華した。 祖母を救うだけで良かったはずだが 結局 悪の団体を 間接的に滅ぼした事が創造神の目に留まったのである。まぁ一本の電話を入れただけ。
___ それがよかったのである。
実際に動いたのは警察であったが その青年の、18歳の行動力に感動し惹かれたのだ、神は。
そこからいろいろあって、力の制限が無くなるという
死亡直後、彼は光りに包まれて突如老けて死んだという伝説もできた…。
//
場面は移り変わり
「で_、どうだった?あの生活は??」
「最高だった、が もう少し自由が欲しかったな。」
少し、と欲望を見せるのに謙遜。「愚かだな私は」と自分に言ってやって
目の前にいるちっこい創造神に話しかけてやる。
第2の人生であったが家族には愛着が湧いていた様で、降り積もっていた涙がこぼれて白く光る床に落ちる。
「う…、まだ満たされないの?」
少年とも少女とも見えるその創造神は自分の顔をうかがっているようで、涙を見て少し心配そうな顔をする。
「ボク…、君が好きだからさ 可能な限り満たしてあげたいんだよね。」
熱くなって漏れ出た言葉に先を見て ボクっ子創造神は顔を赤くして「別にそういう意味じゃない!!」と訳の分からないことを言う。いやわかるけど。。
「コンティニュー出来るのか? 私は。」
願いを乞うことは情けなく、 “我儘” だと知っているが_
「そうだ…! 我が儘に…好きに生きたい 貪欲に純粋に!!」
「いいね!!、自分の意志は大事だよ!」
神は乗り気になっているようで、
「ぁ っでも、君の言う こんてにゅー とは違うかもね。」
「ほう…?」
神に相槌やら。
「今死んだその時代に転生するわけじゃなくて、少し変わった
間髪入れずに吾輩は、
「それでいい。」
と言う。
「うぇっ……? ほんとに…?」
変な声を上げる神さん。続けて自分は目を拭って ありのままで良いんだ… と言ったハインリッヒ(主人公)に神さんは納得したようで、自分の足元に無色の、ほぼ床と同化した魔方陣を広げる。
「つ、次はちょっとボクも見に行きたいな…なんて!!」
魔方陣を展開したまま、ハインリッヒが気になる神さんは “あること” を忘れながら、
答えを聞かずに、神は遂に再転生させる。
ハインは目と鼻の先の創造神がグワン、と肩から揺らぐ懐かしい感覚、もしくは幻覚に心を躍らせつつも 何故か前世、既に王だった頃の死後の世界が見えてきた。
//
「ふぐッ… 父さん、まだ居ますよね…」
息子であるフィリップスは何も知らぬ遺族が泣笑う中、笑いを止めて、手を握って、。深呼吸をする。
「____おれ…!、ぜーいん!! 幸せにするから!!!
父さんができなかった事も…成し遂げるから....! 見てて…下さい_。」
ソレを感じ取った息子が私の手をへし折る様な勢いで握り絞めて、敬意のまま送出してやってくれて..........。
/
「出来なかった事…。」
転生中、少し目を潤ませながら 『魔族との平和』 が叶えられなかった事に念を残して。
「(あとは頼むからなフィル…。)」
/
「(?!)」
何故か聴こえてしまった声に驚いて、王の亡骸を見る。
//
フィリップスの、愛息子の、 強い意志の在る返事が聴こえたような気がする。
そして遂に転生が完了したようだが 視界はとても薄暗い。
というか何も見えない。
「 . . . ... !!」
液体のようなものに体内外を満たされていて、喋れない。
そして徐々に意識が遠のいていく。 ゆっくり、ゆっくり_。
つづく
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます