夜に飛べない蝶
AUGA(オーガ)
第1話 傷だらけの羽
むさ苦しく、夢もない清潔感のかけらもない
プレハブ住宅のなかで
タバコの煙と若い女の話しかしていない
煙たくつまらない
マイナスなことばかり考えながら
俺は愛想笑いを振り向く
あの店の女は股が軽い
金さえちらつかせればついてくる
汚い!
シンプルにそう思った
無精髭をはやした、腹の出た男が
俺の女っ気の無さを馬鹿にする
男は抱いてなんぼ
生物の頂点でもなったかのように
過去の栄光、今まで行為に至った女性の話をする
向こうの気持ちも考えずに
淡々と
そんな彼を愛想笑いの奥深くでは笑えていなかった
確かに俺に女の気配はない
あっても黙秘主義だった
俺はもう恋なんてしたくない
できない
そう思い込もうとしていた
楽しませるための金も今はない
面倒だ
過去の交際していた女性の欠点を思い返し
自分にそう言い聞かせる
「俺、最低だな、、、」
そんな俺の心を表すかのように雨が降ってきた
4年前
この頃から俺の人生は大きく変わっていた
両親の死、父親が残した負債の返済、友人の裏切り
自殺未遂、事業失敗
一年に2つのペースで経験したことにより
心は衰弱していた
その時交際していた人はいた
しかし、その子も俺も若かった
彼女は自己中心的
かといえ自分はかまって挙げれない
別れを切り出しても、今までの自分の言動を棚にあげ
揚げ足をとり
関係を無理に継続
仕方なく俺は彼女に手紙を書き
一方的に別れた
まだ自分の置かれている状況は良くはなっていない
やっと0に戻ったような感じだ
回想シーンのように過去を思い出して
少しいつもより大きなボリュームで大好きなHIPHOPを聞いて帰っていた
赤色の信号が
反射するアスファルト
ワイパーが効かないような殴りの雨
横目に若い男女が笑って、行き先を指差ししている
「寂しい」
そんなことを思ったと同時に
急にうるさく感じるオーディオ
ミュートにし、額を抱えるようにうずくまる
幻想でもいい
自身を正当化し
夜の街に繰り出す
馴染みの店なんてない
ふと目にした店は自分の誕生石が名前となった店
吸い寄せれるように
そこに入る
その時の光景は密に誘われる昆虫のようだった
夜に飛べない蝶 AUGA(オーガ) @AUGA
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