弾けろ!ポップコーン!

佐倉井 月子

第1話 運命の出会い

 「俺の方が先だっただろうが!」


 ドスの利いた声で威嚇するように吠えたのは、元ヤン感が隠しきれないeスポーツ同好会会長の渡辺。


 「はぁ?ゲームのし過ぎで、幻覚でも見えるようになったのか?」


 渡辺の声に怯むことなくからかうように返すのは、お調子者で愛されキャラのスケボー同好会会長の伊藤。


 「お前こそ、スケボーで転んで、頭でも打ったんじゃねーのか?」

 「てっめぇ、調子こいてんじゃねーぞ」

 「調子こいてるのは、そっちの方だろうがっ」

 「やるかっ?」

 「やれんのかっ?」

 「ちょっと待ったぁー!!」


 今にも掴みかかろうと睨み合う二人の間に割って入ったのは、文化祭実行委員長の隅田。教室に響くほどの大声を出したのに、まるで呟いただけだったように無表情だ。隅田は、二人が出した申込用紙を見ながら提案した。


 「文化祭で行う模擬店の飲食ブースの残り一枠は、eスポーツ同好会かスケボー同好会のどちらかになりますが、提出が同時だった為、話し合いにて決めたいと思います」

 「はぁ?冗談じゃねぇ。話し合いで譲れるなら、とっくに譲ってるわ。そうだろ、eスポーツ同好会」

 「そうだよ、こっちは会員みんなの思いを代表して持って来てんだ。話し合いなんかで決められるか。なぁ、スケボー同好会」


 気が合うのか合わないのか、譲る気が無いのはどちらも同じで、今度は二人が隅田につかみ掛かる勢いで睨んでいる。

 鬼の形相の男子高生二人に睨まれているのに、怖がるどころか眉一つ動かさない隅田は、シャープな顎に指を当て少し考えると、口を開いた。


 「では、何らかの方法で3本勝負をし、2勝した方が残り一枠の飲食ブースを獲得すると言うのはどうでしょう?これならハッキリとした勝敗がつくので、潔く譲れるのではないですか」


 二人は顔を見合わせて、3秒後に大きく頷くと、隅田に宣言した。


 「いいだろう」

 「望むところだ」


 隅田は交互に二人の目をしっかり見ると、高らかに宣言した。


 「では、残り一枠の飲食ブースを掛けて、eスポーツ同好会とスケボー同好会の3本勝負を行います。勝負の内容は1時間後に発表しますので、会員全員でここに集合してください」


 こうして、意地とプライドと飲食ブースを掛けた、真剣勝負が行われることになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る