第2話 正々堂々、真剣勝負

 1時間後、文化祭実行委員会の事務室(空き教室)に、会員4名のeスポーツ同好会と、同じく会員4名のスケボー同好会が全員揃ってやって来た。


 「皆さん、揃っていますね。では、勝負の内容を発表します。

 まず一戦目は、黒ひげ危機一髪!各同好会が一人ずつ交互に刺して行き、黒ひげを飛ばしてしまった方が負け。単純なゲームほどハッキリした勝敗が付きますので、最初の勝負に適しています。

 二戦目は、カラオケ採点バトル。これは各同好会、代表者1名を選出して下さい。同じ曲を1回だけ歌い、カラオケの採点で高い得点を獲得した方の勝利。誰の忖度もない機械の判定に、文句はつけられないでしょう。

 三戦目は、動画投稿サイトにて「ダンス動画」を投稿してもらいます。その動画の再生回数が多い方の勝利。こちらは、各同好会の個性が出せる勝負になりますので、存分に励んでください。尚、こちらの選曲も同じ曲とします。

 以上、この三戦の内、先に2勝したら、その時点で勝負が決まり、3本目は無効とします。いずれの戦いも正々堂々と戦い、全力を尽くしてください」


 隅田は8人みんなを見渡して、意志を確認する。

 8人は無言のまま頷くと、早くもそれぞれ睨み合う。


 「では、カラオケバトルの選曲を行います。隅田調べ、10代カラオケトップ10を書いた紙がこの中に入っています」


 隅田は派手な抽選箱を持ち上げると、軽く振って中身がある事を教える。


 「では、実行委員長である私、隅田が引きます」


 隅田は抽選箱の中に手を入れると、グルグルとかき混ぜながら「ドロドロドロドロ…」と、自らドラムロールを歌った。無表情のまま高らかに歌う姿は何ともシュールで、睨み合っていた8人全員がポカンとした顔で隅田を見た。


 「ジャン!優里の『ドライフラワー』に決定!」


 ポカンとしていた8人は、曲名が発表されると「おぉ~」と納得の声を漏らし、それぞれの仲間同士で顔を見合わせた。


 「明日の放課後に駅前のカラオケボックスで勝負します。それまでに代表者1名を決めておいてください。では、次にダンス動画の選曲に参ります」


 隅田はもう一つの抽選箱を取り出すと、先と同じように軽く振って中身がある事を教えながら説明した。


 「某動画サイトで人気の『ダンス動画トップ10』の曲を書いた紙が入っています。では、引きます!」


 隅田はまた自らドラムロールを歌いながらグルグルとかき混ぜ、自分に向けられている視線を一人ずつ見ながら間を取る。


 「ジャン!SEKAI NO OWARI の『Habit』です!」


 これも曲名が発表されると、「よしっ」「マジかよっ」と、それぞれが違う反応をしているが、高揚感は先ほどよりも増している。


 「動画は早速作成し、出来次第アップしてください。3日後の17時の時点で視聴回数が多い方が勝ちです。但し、タグ付けは#Habitと#男子高生のダンス。以外は無しとします。

 では、明日の放課後に最初の勝負『黒ひげ危機一髪!』をしますので、皆さんこの場所に集合してください。」


 隅田が話し終えると、両同好会の面々は、気合と牽制と虚勢と鼓舞を口にしながらそれぞれの活動場所へと戻って行った。

 隅田は本日最大の仕事を終えると、目を細めながら8人それぞれの背中を見送った。

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