決別

高岩 沙由

決別

 秋だというのに、まだ暑い今日。


 わずかな涼を求めて海辺とやってきた。


 誰もいない浜辺、靴を脱いで裸足で波打ち際を歩く。


 ぼんやりとよせてかえす波を見ているとふいに涙が溢れてくる。


 海の好きな人だった。


 ある日突然、あっけなくいなくなり、その日から私の心は凍り付いてしまった。


 頬を流れる涙を拭っていると名前を呼ばれ振り向くと私の心を溶かしてくれた大事な人の笑顔が見えた。


 あの人を忘れるわけではない。


 ただ、大事な思い出としてこれからは一緒に生きていく。


「さようなら」


 海に向かって一言呟くと私は大事な人の元へと歩いていった。

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決別 高岩 沙由 @umitonya

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