夏の暑い日。目覚めた僕は喉が渇いていたので、1階にあるダイニングに向かった。
ドアを開けると父がソファーに座り右手に持ったライターで1枚の写真を焼こうとしているのを見て僕は不思議に思って声を掛ける。
「父さん、何しているの?」
突然声を掛けられ、肩がはねた父は僕の顔を見る。
血の気の引いた父の顔を見て、興味を覚えた僕は父親の近くにいき、左手でぎゅ、と握っている写真を見る。
それは、レンガ造りの橋の下、緑色の水が流れている水路に、流れている水と同じ色をしている潜水艦が中央に移りこんでいる。
よく見ると、写真は半分に切られていて、枠の部分は所々焼けていて、右側の隅には双眼鏡を手にした人間がいる。
そして、2015、という数字が見える。
「これは、今から300年前の写真なの?」
父は青白い顔をして無言のまま頷いている。
「なぜ、焼こうとしたの?」
「それは……」
父が何かを言おうとしたときに、急に部屋の中で強い風が巻き起こる。
突然の出来事だったが、飛ばされないよう足に力を入れて目を瞑り、風がおさまるのを待った。