第4話 夢見が兇い 番外
閑話休題
「なごみ、明日は頼むよ。多分女性がくるから」
『分かったわ。話を聞く限り多分彼女のが進んでるわね』
鉛筆を芯にして自分で調合したタバコを巻いていく。タバコ好きはシャグで通じる。
『かず、これでどうかしら』
なごみから手製のタバコを受け取りオイルライターで着火する。そして肺には入れずにふかす。
「うん。ラベンダーが効いてるね。鎮静と魔除けには手に入りやすくていい」
それから中頃迄ふかすとパチパチとはじけ始めるタバコ。
「クローブか。クレテックも物珍しくは無いけども気を逸らすには良いだろうね」
スパイスを織りこんだタバコはクレテックという。
スパイスの香りを楽しめてコアなファンはいる。
『じゃあタバコはこれでいいわね。ねー今日のナイトキャップは何?』
「生まれ年の『どなん』だよ。刀自姫さんからの贈り物」
『クバ巻は確かこれで最後よね』
花酒どなんクバ巻は今ではとても内地では出会えない。
「ああ。だけれども『夢見が感染る』かもしれないから格の高い酒で除けておこう」
『そうね。シャルトリューズとチェイサーが効いて多分夢見が一時的に離れてるだろうから…』
なごみは手乗りの陶器にテトラ型のラベンダーのインセンスを置いて火をつける。
シャルトリューズは修道院で作られるリキュール。瓶には紋章も刻印されている。更にはレシピは口伝で代々数人の修道僧にしか作れない現代まで続くエリクシールであり魔除けであり薬酒である。
インセンス。お香。ヨガや瞑想の効果を高めるのに使い、リラックスや集中、香り自体を楽しんだりする。今回は簡単な結界として焚いている。
『お酒と魔除けで念の為…ね。ではもう休みましょうか』
「ああ。そして君にバトンタッチだ」
かずはそう言った。
ここは店から紹介された安アパート。
単身用で部屋には長髪のかつらを手入れしながら一人で話し続ける人間が一人。
『分かったわ、かず。お休みなさい』
ストレートでどなんをあおる。
その人間は髪を整えてからかつらをかぶり、テーブルの上の鏡と櫛でどんどん女性的になっていく。
『さあて、私はなごみ。もう少し声は柔らかくするのが良いかしらね』
クローゼットを開けながら明日の服装を考えた。
渡り巫女 太刀山いめ @tachiyamaime
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。渡り巫女の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
私の食卓/太刀山いめ
★2 エッセイ・ノンフィクション 連載中 2話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます