第二部 最終話 ハセミガルド王国
シュタイナーの埋葬は夫人の立ち会いの許、しめやかに行われた。その際、棺に眠る遺体の肩にアルフィーによって剣が当てられ、邸の者たちが見守る中で騎士叙任がなされたのである。
「シュタイナー殿を我が騎士に任じます」
「謹んでお受け致します」
口を利けぬ夫の代わりに夫人がそう応えた。そして棺が埋められていく。
邸にはシュタイナーと仲がよかった使用人も多く、彼らは老若男女問わず故人の冥福を祈り、在りし日の姿を思い浮かべて涙していた。
そしてその約一カ月後、優弥の言葉通りハセミガルド王国から王国騎士叙任証書が送られてきた。また、これによって夫人には一生涯遺族年金が支払われることになる。
つまり領主アルフィーの騎士としての給金に加え、王国からも年金が支給されるということだ。さらに彼の息子シュタインは成人してからとなるが、本人が望むのであれば王国騎士への道もつけられたのである。
ちなみに遺族年金は騎士が殉職した際に支払われると決まっている。ただ、優弥の統治になってからはほとんど例がないが、盗賊や魔物の討伐で不幸にも命を落とす者はいた。
それから四年の歳月が流れ、アルフィーは十五歳となり成人を迎えた。これによって暫定的だった王太子の立場が、正式に国内外に発布される。
また、ジルポール領主は一つ年下の第二王子ライリーが、ライリー・ジルポール・ハセミとして引き継いだ。彼には翌年の成人と共に、公爵位が与えられることになっている。
「アルフィーよ、今後は
「はっ! およそ四年間、ジルポール領主として得た経験を王国の治政に生かす所存にございます」
「うむ。ジルポール領は属領とはいえ、元は独立した一つの王国であった。それを治めた四年間は得難き力となるであろう」
「はい!」
「時にアルフィー」
「はい?」
そこで優弥は背もたれにふんぞり返って腕を組み、口元に意地悪い笑みを浮かべた。
「
「な、何故それを……!?」
「メイリンからではないぞ。まあ、父の許にはロッティがいるのだ。漏れないとでも思ったか?」
「う……で、ですがフラれたというのは誤りです! 今はまだ庭番衆として仕えたいと言われただけで……」
「イズナにも断られたではないか」
アルフィーの名誉のために言うが、メイリンにフラれたからイズナに求婚したわけではない。二人同時に求婚したのだ。優弥がイズナへの求婚を知っていたのは、単に彼女とアルフィーにほとんど接点がなかったため、間に入って話を通したからである。
「まったく、見境いのないことよ。一体どこの誰に似たというのか」
「それは父上かと」
「
「母上とポーラ
「こちらから頼んだわけではないわ」
余談だがすでに魔王ティベリアとエルフのアリアは入籍済み。ただし魔王は魔法で妊娠を避けており、アリアとの間に子は出来ていない。やることはやっている。
実は優弥の寿命はステータスのお陰で常人よりはるかに長い。このことを本人は何となく感じていたが確信はなく、周囲に至っては考えにも及んでいなかった。しかしティベリアだけはしっかりと勘づいていたのである。
つまり優弥の血を色濃く継いでステータスの高いアルフィーは別として、今いる他の一族は皆彼より先に死んでしまうということである。むろん王子や王女に子や孫が出来れば一族が絶えることはないが、血が薄まるのは避けられない。
そうなった時に改めて、彼女は優弥との子を儲けることにしたのである。ハセミガルド王国、そして自身のアルタミラ魔法国が永く栄えていくために。
そしてこれより約十年後、優弥は五十歳で退位し、王位をアルフィーに譲って隠居の身となることを選んだ。居をアルタミールに移し身分も大公と改めた。
この時、新国王アルフィー・ジルポール・ハセミは二十六歳。即位と共にメイリンとイズナを順位をつけず王妃に迎え、十人もの若い庭番衆を側室にして多くの子を授かることになる。
ハセミガルド王国はこれからも繁栄していくことだろう。
――あとがき――
これで第二部完結とします。
第三部はどうかな〜
今のところは続けるか分かりません。
とにかくここまで読んで下さった皆様、ありがとうございました(^o^)
勇者の抱き合わせ。〜抱き合わせのいらない方として異世界に召喚されました。歩くだけで経験値たまってレベルアップでステータス2倍になるとかすげーことになってるんだけど〜 白田 まろん @shiratamaron
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