03 奴らは感想がないと死ぬ
深夜の薄暗い街を歩きながら、〈24601〉とジョージ・オウルは街の中心部を離れた。
夜だが〈
「夜なのに人が多いんですね……」
「誰もが物語を求めているからな。無料で」
「無料……」
「当然、無料だから治安も悪くなる。だがまあ、気にするな。ここはそういう街なのさ」
その言葉に、〈24601〉は少し考えて言った。
「無料ってことは、〈
「一部の人間はそうだ。書籍化やアニメ化によって、莫大な富を得られる。だが、〈
「自己満足……でも、みんなが無料だったら、街の運営は成り立たないんじゃ……」
「ここの〈運営〉は外部からの貿易商人が出す広告費と入市税でガッポリだ。そして一番は、〈
「……でも、ジョージさんはここで書いているわけですよね?」
「まあな」
ジョージの後をついていきながら、途中、寂れて誰にも見向きされなくなった『文芸(純文学)区画』を通ると、道路脇に血走った目をした二人の〈
「うひひひっ! ブクマブクマブクマ……」
「おいおいおい、こーんなところに〈
「俺らはよ、チャンスがあれば成り上がれるんだ……おい、お前のセカイいいよ! すごくいいよ!」
「わかる? 今度のは自信作なんだ! ぎゃははははっ!」
「……あの、酔ってるんですか?」
通せんぼするように立ち塞がる二人に、ジョージは顔をしかめた。
「ちっ、『評価中毒』か。やめろ、立ち去れ。お前たちに構っている暇はない」
「構ってる暇はないだとお!? この野郎! 俺のセカイを読めよ! 読めばよさがわかるんだよ!!」
「そうだぜ、おいおい、無料でってわけじゃない。ほら、お前たちのセカイも見てあげるからよ……なんなら、☆5評価してやってもいい! ギブ・アンド・テイクだよ? うひゃひゃひゃ、わかるぅ?」
「よろしければ、チャンネル登録お願いしますってな!」
「おいおいおい、兄弟。そりゃ、YouTubeだぜ! それよりブクマだブクマ! ブクマブクマブクマブクマブクマブクマブクマブクマブクマ……」
「☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価☆5評価……」
ジョージはため息交じりに首を振って、「ブロックと言え」と〈24601〉に言った。
「ブロック!」
〈24601〉が声を上げると、途端に二人の姿が消えた。
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ユーザー:●●●、●●●をブロックしました。
― ― ―
「い、今のはなんですか?」
「評価中毒者だ。奴らは感想がないと死ぬ」
「評価中毒?」
「自分のセカイになんらかの
「なんだか、可哀想な人たちですね」
「俺も一度、ああなったことがある。自分の書くものが無視されるというのは、辛いものさ。あの状態から助かったのは奇跡だ。……気をつけろよ、注意しないと、お前も罹って、いつかああなるかもしれんぞ」
「そんな、まさか! さすがに、ああはなりませんよ、さすがに……」
「…………」
軽く笑って言う〈24601〉に、ジョージは神妙の面持ちのまま頷いた。
「だといいがな」
~~~
感想がないのは辛いけど、無理やりに読ませるのも違う気がするよね。
好きで始めたことなのに、どうしてなんだろうか。
お読みいただき、ありがとうございました!
よろしければ、ブクマ、コメント、レビューなど何卒よろしくお願いいたします。
(*- -)(*_ _)ペコリ
ナロウの街角で ~転生した底辺作家、才能《チート》がないのでオリキャラと試行錯誤して努力と戦略でランキングを成り上がる~ 上地王植琉【私訳古典シリーズ発売中!】 @Jorge-Orwell
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