図書館のこびと

折原ひと

第1話 蔦のからまる図書館で

『赤いレンガの図書館』と呼ばれている、丘の上の図書館には、小人がいるってうわさがあるんだって。


小人は、夜中に本の修繕をしたり、べつの本棚につっこまれて、迷子になってしまった絵本を戻したり、おすすめなのに誰にも読まれない本をそっと飾り棚に置いたり…そういう仕事をしているんだって。


図書館司書の田中さんは、毎晩帰る前に小さなコップに牛乳を注ぎ、そっと給湯室に置いておくそうな。朝にはミルクがなくなって、どうしても剥がれなかったページが傷ひとつなく、きれいに剥がれていたこともあったそうだよ。


君は、あの赤いレンガの、青々とした蔦のからまる、なかなか良い本が揃っている図書館に行ってみたことはあるかな?


もし訪ねることがあったら、本は大切に読んで、正しい棚にしまってあげてくれよ。なにせ、小人はとても小さくて、間違った棚から正しい棚に移すのは一苦労だろうからね。

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図書館のこびと 折原ひと @parfaitthestudy

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