野良犬
机の上に、手のひらに乗るほどの犬がいた。小さな狼にも見えるそれは、さらに小さな小さな仔犬を三匹ほど連れていた。よくよく見ると、親犬は母親ではなく雄のようだった。
何やら物欲しげだったため水を飲ませはしたが、餌はどうしようか。犬に食わせて障りがなさそうなものなど、独り身の我が家にはない。これなら多少ましだろうかと冷や飯を少し手に乗せてやる。犬が小さいので、もはや米粒をいくつか指先につけているようなものだ。かれらは思いの外無警戒で、親子で米粒にはくはくと食らいついているさまは無性に愛らしかった。
犬たちはそれぞれ服を着ていた。雨合羽のような形をした服だ。誰かが着せたものなのだろうが、着心地が悪そうな様子もなく当たり前に似合っていた。かれらはきっと方々を渡り歩き、餌や着物をもらいながら旅をしているのだ、と私は思った。
てのひらゆめうつつ 涙墨りぜ @dokuraz
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