そしてまた、ため息

 私はため息をついた。なぜなら、あの女子高生が全く同じ状態で捕まっているからだ。

 今回は性格悪そうなおばさん霊だが。


 気をつけてって言ったよな?


 あの後酷かったんだぞ? 気持ち悪さに何度も吐いて、もう二度と除霊なんてしないと誓った。


 きもデブおっさん悪霊と、二十七歳の私のキスなんてロマンスの欠片もない。嫌な思考も入ってくるから落ち込んだりもした。


 癒しの特異体質だか何だか知らないけど、私はもう醜い欲望に触れるのはウンザリだ。

 本当の意味のキスもしたことないんだぞ?


 悪霊を吸い取った汚れた唇で、好きな子に触れられる訳もない。


 明日には田舎に引っ越すのに、またこれ? 勘弁して欲しい。



 げげ! 目が合った。

 ちょっ、なにその熱い視線……


『助けて』って?


 いや……私はね、厳しく育てられたから善人ぶってるけど、心の中ではいつも悪態ついてんの。

 悪霊吸い取り過ぎて心汚れてんの!


 あ~あ、ボロボロ泣き始めたよ。

 わかったよ、やりゃ~いいんでしょ!


 ヤケクソになった私は、怒りの足取りで彼女に近づき、強引に抱き寄せて除霊キスをする。


 ぶっちゅぅぅ


「これで最後だから! 」

 そう言って走り去る。


 早く口洗いたい。気持ち悪りぃ~!






 あれから三年経った。

 彼とはその後出会うことなく私は地元に帰ってきた。緑と青が広がる景色に安堵する。


 やっぱり私の居場所はここだ。胸を弾ませるキラメキはないけれど落ち着ける場所。


 ここで静かに生きていこう。

 除霊の腕は磨かれたけど醜い彼等と戦うのは疲れた。



 橋の上で川を眺めるくせ毛の男性が目に入る。その後ろには意地悪に笑う霊。


 川に突き落とそうとしてる?



 私は声をかけた。

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優しい私 @tonari0407

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