後日談 ゴーレムミュージアム


 とある博物館。そこでは大量のゴーレムが飾られていて、大勢の人が見物に来ていた。


「これがアイアンメイルゴーレムかぁ。農業のためのやつなんだっけ?」

「爪部分を鉄にしたことで、鉄農具のように耕せるらしいわよ」


 ゴーレムを見ていた二人の少年少女ペアが、ブツブツと感想を述べている。


 片方はメガネをかけた知的な少女。もう片方は少し生意気そうな顔をしていた。


「これがあの伝説のゴーレム使いベギラの発明のひとつかぁ。すごいなぁ」

「必要な箇所だけ鉄にして、それ以外は安い素材にする。単純なようで技術が必要だからな。これを七十年前にやったのだけはすごい」

「そりゃあ伝説のゴーレム使いだからね。十年前に亡くなるまで、どれだけ色んなのを作ったと思ってるのよ」


 ベギラはすでに故人である。


 この博物館はゴーレムを展示し、亡きベギラの功績を称えるために作成したものだった。


 彼がエルフたちを倒すため、そして倒した後も作成したゴーレムたち。その大半はこの博物館に飾られている。


「この大陸がレーリア国で統一されたのは、ベギラ様のおかげと言っても過言じゃないらしいよ」

「それ本当なのかねぇ。学校ではそう習ったけど」


 ブツブツと話し込む二人の側に、燕尾服を着た木のゴーレムがやってくる。そのゴーレムの持っているお盆には、ワインの入ったグラスがのっていた。


「オノミモノヲドウゾ」

「お、さんきゅ」


 少年たちはワインの入ったグラスを受け取ると、ゆっくりと口をつけて飲み干す。


 そして再びお盆に戻すと、ゴーレムはペコリと頭を下げて去っていく。


「あの給仕ゴーレムもベギラ様が開発したのよ。それだけじゃない、自動車ゴーレムも飛行機ゴーレムも、自販機ゴーレムもって習ったわ」

「流石に盛ってるだろ。どうせ誰かと共同制作とかしてたに決まってる。それより次に行こうぜ」


 少年たちはワイワイ話しながら、展示されたゴーレムを見学していく。


 フィッシュタンクゴーレム、城壁ゴーレム、荷台ゴーレム……数々の務めを終えたゴーレムたちが、修復されて展示されていた。


「どれも古臭いなぁ。今ならもっと恰好いいデザインなのに」

「当時の最先端よ? 古臭いんじゃなくてそもそも古いの。それより巨人ゴーレムとかない? ほら兵器として大暴れしたってやつ」

「流石に博物館には展示できないだろ。でかすぎる」

「残念。見たかったのに」


 少しつまらなそうな顔をする少女。それに対して、再び燕尾服を着たゴーレムが近づいてきた。


 今度は手に持っているのはお盆ではなく、小さな親指ほどのサイズのゴーレムだったが。


「若人たちよ。この博物館はどうかのう?」

「うおっ!? ゴーレムが喋った!?」

「おお。これはベギラ最高傑作のひとつ、インテリジェンスゴーレムね。奇跡的にできたオーパーツで、二度と作成できないと有名な」


 驚く少年に対して、メガネの少女がすかさず教える。


「ほっほっほ。ワシのことはええわい。それよりゴーレムについてどう思うかな? この博物館のゴーレムは古臭いとのことじゃが」

「いやそんなことはありませ……」

「古臭いでしょ。確かに昔は新しかったのかもしれないけど、今はもっといい物が作れるはず」


 言い作ろうとする少女に対して、少年はぶっきらぼうに答える。


「ちょっと……ゴーレム相手とは言え失礼よ。ごめんなさい。この子、口だけは大きくて……」

「口だけじゃない! 俺はここに飾ってるのより、もっとすごいゴーレムを作れる!  そしていっぱい金を儲けて、女の子にモテモテになるんだ!」

「くっだらない……」


 少年の下種な宣言に、少女は呆れた声を出した。


 だが小さなゴーレムはその言葉に反応し、小さな手をパンと叩く。


「ほほう、それは面白いのう。女の子にモテるためにゴーレムを作るとな?」

「ごめんなさい。この子、ちょっと頭がおかしいだけなので……」

「おかしいとは失礼だな! 俺は本気だ! ゴーレム魔法使いはエリートなんだ! その中で優秀となれば必ずモテる!」 

「そんな不純な動機で優秀になれるわけないでしょ! それこそベギラ様みたいに、ゴーレムに生涯を尽くさないと!」


 とうとう少年と少女は喧嘩をし始める。


 それを小さなゴーレムは眺めていた。顔がないので表情こそ分からないが、なにやら楽しそうに。


「ほっほっほ。なになに、不純でも動機は動機じゃ。案外そういった者の方が、新しい風を吹かせるかもしれぬぞ」

「いいこと言うじゃないか! ゴーレムのくせに!」

「だから失礼だってば! もう行くわよ! ごめんなさい、不快な思いをさせてしまって」

「あっちょっと痛い!? 引っ張るなって!?」


 少年は少女に腕を引っ張られて、どこかへと連れていかれる。

 

 それを見ながらインテリジェンスゴーレム――かつて師匠ゴーレムと言われた者は、うんうんと小さく頷く。


「あの者らを見ていると、小さいころの弟子たちを思い出すのう……ベギラよ、お主のやったことはこの世界を変えた。若人よ、頑張るがよい。励むがよい。ゴーレムは無限の可能性があるのじゃから」


 そう言い残して、師匠ゴーレムを乗せた執事ゴーレムが歩いていく。


「さてワシも若いものには負けられんのう! さっそく新たなゴーレムを作るか!」


 


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そういうわけで最終後日談でした。

ベギラのゴーレム技術によって、この世界は大きな発展をして……という形です。

この大陸も統一されたので平和になりました。

ベギラたちがワイワイする後日談にするか迷ったのですが、この作品はゴーレムを軸としているのでこうしました。

ベギラは本当に好き放題して、色々とヤバイことになりました。というので話を締めさせて頂きます。

私は他にも作品も書いていますので、機会がありましたらよろしくお願いします。


それと宣伝させてください。

拙作、『弱点ゼロ吸血鬼の領地改革』が本日発売です!

実は私はこの吸血鬼作品の書籍化作業中に、かなり創作の勉強をしました。

結果として、このゴーレム作品にも影響が出ております。

(特に終盤辺り)


ゴーレムと吸血鬼という題材の違いこそありますが、同じようなノリで書いているつもりです。

またWeb版よりも改稿によって、クオリティも上がっています。

よろしければ書籍で読んでいただけると嬉しいです。

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最後に。

読者の皆様、後日談までお読みいただき誠にありがとうございました。

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転生したらゴーレム魔法の才能があったので、無双して貴族になってハーレム目指します! ~ゴーレム魔法は存在価値がない? ないのは工夫だよ~ 純クロン @clon

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