最終話 星崎 千秋の計画
私、星崎 千秋は今最愛の夫と幸せに暮らしています。
本当に可愛くて、カッコよくて大好きな彼。
高校時代に“偶然の連鎖”で、結婚を前提に付き合い始め、大学を卒業してから2年後。宣言通り、つい先月結婚致しました。
まだまだ2人とも仕事に着いたばかりで軌道に乗らず、新人として日々研鑽を積み、同僚たちと切磋琢磨している状況ですがやりがいのある仕事は楽しく、愛する旦那もいるので幸せです。
毎日毎日が慌ただしく過ぎ、毎日毎日疲弊し切った状態で我が家に帰ります。
「あ、おかえり千秋」
「────ただいま、玄く〜ん♡」
それだけで疲れが抹消されるぐらいの幸福を得られます。なにせ最愛の人からの「おかえり」には圧倒的な細胞活性化エネルギーが含まれているのですから。
これが私の望んだ未来そのものでとても充実しています。
☆☆☆
──本当のことを今ここで懺悔します。
私が彼……御手洗 玄くんのお嫁さんになるまでの物語は何から何まで私が手を加え、仕組んだことなんです!
────つまり、玄くんが私の裸を見たのは偶然なんかでは無く、なるべくしてなったのです。
彼があの旧校舎 資料室に来るように仕向ける為に彼が日直という日を狙い、参考書をわざわざ旧校舎から多めに持って来て置き、教科係であるのに片付けなかったのも。絶対に1人で来るように人払いを行ったのも。担任にしれっと彼に仕事を押付けるように促したのも。
ほぼほぼ全ての出来事に私が関わっているんです。
そして、彼が資料室に入って来るタイミングを見計らい、ワザと裸を晒し……彼との物語が始まったのです。
成長した私の悩殺ボディで一瞬で虜にしてあげる♪というゴリ押しな理由もありますが、『責任をとって!』と彼に強く迫るきっかけともう私以外の女じゃ満足出来なくするという……様々な考えを集約させて実行した計画なのです。
序盤は
──ほんとぉーに。カッコよくて、大好きで。いつ思い出してもたまりません。
でも、まさか……彼から『結婚』だなんて。最高に嬉しい言葉を言ってくれるじゃないですか。引っ込み思案で、女子に奥手になっていた彼を久しぶりに見て少し不安でしたが、彼は相変わらず男らしくてカッコよかったです。
☆☆☆
……え、どうしてそんなことをしたって?
気になるのも当然ですね。何故、私が彼に“執着”するのかと言いますとね。
ぶっちゃけ彼は覚えてないかもしれませんが、実は私と彼は小学校低学年ぐらいまで同じクラスで“友達”だったんです。まぁ、友達と思っているのは彼だけで、私は恋愛感情増し増しの女の子でしたが…………
その時の私は女らしからぬ風貌と態度で、髪は短髪。性格は荒く。毎日バカみたいなことをやっては先生に首根っこ掴まれて説教される……そんな日常でした。
そんなやんちゃガールだった私と同じクラスにいた彼とではやはり接点は無く、とあるきっかけが無いまでは名前すらろくに覚えていませんでした。
まぁ、そのとあるきっかけから私と彼は仲の良い友達という関係になるのですが──
私はよく他校の生徒(男子)とも喧嘩をしていて、無駄に強かったこともあり、他校や年上の悪ガキたちによく目を付けられていました。勿論、仲間なんて居ない一匹狼な私が複数人の悪ガキ相手に勝てるはずも無く、毎回逃げるかフルボッコにされるかの2択のハードな時を過ごしていました。
そして今日もまた悪ガキたちのダル絡みを受け、フルボッコにされると覚悟していた時でした。
「とりゃぁー!」
悪ガキたちの後ろから突然、1人の男子がドロップキックをして乱入して来たんです!
そう彼は後の私の夫になる 御手洗 玄くん。勉強も普通、運動も普通の余り目立たないクラスメイトという印象しかない男子でした。
だけど……私は強い衝撃を彼に受けました。
今までずっと1人。小学生になって、慣れない環境での集団生活。周りは非常に幼く、おじおじとしたヘタレばかり。更には寄って集って私の敵になる。
だから、仲間なんて要らなかった。友達なんて必要無かった。だけど……私は初めてその大切さを知った。そして、男の子のカッコ良さと自分が女の子だという非力さを理解することになりました。
「な、なんだオメー!」
「あ?たった1人、しかもクラスメイトを複数人でボコボコにして恥ずかしくねーのかよ?」
「あ!?元々コイツが喧嘩を……」
「問答無用ぉー!」
悪ガキ(恐らくリーダー)の言葉を言い終えていないのにも関わらず、喧嘩がスタートした。私もなんだかよく分からなかったけど、彼と共に戦い…………………
──まぁ、喧嘩は……やっぱり、散々で。
彼はめっちゃ弱かった。最初は真後ろからのドロップキックだったから命中したというだけで、腕っ節は弱者そのものだった。
一方的に2人で殴られまくり、ボロボロになってそこら辺の地面に横たわる。身体はしばらく動かない。だからなのか、普段は無口の私は自ら彼に声を掛けていた。
「──ねぇ、どうしてそんな意味の無いことをした?」
「え、あはは。まぁ、普通に足でまといだったかな。でも、ちょっと目に余る光景だったからね。介入せざるを得なかったんだ」
「は、どういうことだよ?」
「そりゃあ誰だって助けに行きたくなるよ。だってクラスメイトの“女の子”が複数人の男たちに囲まれているんだからね」
その言葉が、トクンっと私の心に静かに響いた。
「え……あ、はぁ!?おま、お前……誰が、女の子だって!?」
「もちろん君のことだよ、星崎さん!」
今までずっと女の子扱いされることに嫌悪感しか感じなかった。女とはか弱い生き物で、男に力で勝てず負けるからだ。でも、彼からの言葉には針が無く、逆に身体がポカポカと火照った。
そうこれは初恋。しかも一目惚れのガチのヤツだった。
彼は私に女としての変わるきっかけをくれたのだ。
……そうして私は彼から好かれる為だけに努力した。彼みたいに“イケメン”で性格もいい人と釣り合う為には……と、考え。
髪を伸ばし、言葉を整え……喧嘩もその日から辞めた。
小学生の時点で、私は運命の人はこの人にすると……決めていたんです。
丁度小学生の途中で親の転勤という形で離れ離れになりましたが、自分を心機一転する機会が訪れたと考え直し、彼との別れをグッと堪えました。
彼と離れるのは寂しい。だけど、既に家と家族構成は把握している。後から、入部した部活や何組なのか、登校時間と下校時間を調べてどういう子がタイプなのかも検討をつけよう。
彼と会えない期間。私は彼だけのことを考え、彼の為を思って自分を磨いた。だから彼に見合うだけの女になれたのだろうか?可愛いって思ってくれているのだろうか?
周りの評価なんて全く意味は無く、私は彼だけに執着した。不安と期待を抱きつつ、私は彼と同じ高校に進学した。運良く同じクラスになれた私は幸運だった。
流石に見た目と雰囲気が全然違う私をあの時のクラスメイトだと彼は気付かず、1年が経過したが……私は逆にチャンスだと考え、情報収集と作戦の練り直しをしました。
そうして前々から立てていたゴリ押し作戦で私と彼は結ばれたのでした。
ふふふ、毎日が幸せ過ぎて本当にもうダメになっちゃうよ♡
少しドキドキしたけど……『裸になってて良かった♡』
これから、ずっと、ずうっーっと♡
一緒だよ、玄くん。
──だって、私はあなたを1番に愛してるんだもの♡
✣✣✣
ご愛読ありがとうございました!
無事、完結です!!!
美少女の裸を見てしまい「責任取って」と言われたので男見せることにしました! かえるの歌🐸 @kaerunouta
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