転生もののなかでも、これは異端なのではないでしょうか? 主人公は建築士です。物語の「異世界」においてもレアジョブだそうです。同じくレアジョブの破戒僧グレゴリー、風水師のコウとパーティを組み、クエストをしながら旅してまわっています。
彼らの旅は実にまったりしており、それ、危機じゃない?という出来事もそれなりに経験しますが、誰も動じません。クエストに使命感を燃やすこともなく、何か好奇心を満たしてくれるものはないか、それを求めて旅を続けているというのが正しそうです。
途中から、子供にしか見えないけれど実はすごい存在の幼体であるコルビーくんも仲間に加わり、旅はさらにマニアック街道を突き進みます。何が嬉しいかって、この小説は無駄に読み手の精神をかき乱しません。登場人物(人じゃないけれど)はみなひょうひょうとしています。いつ、どんな気分で読みはじめても、さらりとその世界に迎え入れてくれます。
ところどころに建築関係の知識や小ネタが仕込まれています。これを探しながら読むのも、また面白いですよ。小ネタについては「あとがき」でまとめてネタばらししてもらえますので、どうぞお楽しみに!
「建築士」と言う冒険の役に立たないスキル持ちの主人公と言いますが、なんのなんの。個性豊かなパーティーメンバーとともに、取材旅行のような冒険の旅が読んでいてとても楽しい作品です。
一見すると、ぎゅっと詰まった文体も、描写がとても丁寧なので頭の中で映像が浮かび上がり、スルスルと読み進めることができます。
こちらの作品は、作者自身のリアル職業の知識をふんだんにちりばめられた、堅牢な土台の上に建つ、素晴らしい建築物のようです。
作中にたびたび出てくる主人公クニオが書いた、挿絵やパース図がふんだんにちりばめられたガイドブック。私もサイン付きで欲しいです。
スキル系異世界ファンタジーが苦手な人も、これは気にする事なく楽しめること間違いなしです!