第1話

昔ながらの木造2階建築が立ち並び、大通りには石畳が隙間なく敷き詰められ、人が行き交う村の中心部。

少し耳を傾ければ、戦闘のーーおそらくは模擬戦ーーの音が聞こえてくる。

ここは、人里離れた山の中に造られた村。

竜とともに生き、道を外れし悪しき竜を討つ戦闘民族『竜狩りの一族』が住む村の一つ『リィ・ミーアウ村』。


そこから外れたの切り株の上で俺はぼーっとしていた。

鍛錬に励むわけでもなく、勉学に精を出すわけでもなく、ただ暇を持て余して、風が吹き、連なる山々を視界の遠くに納めながら、その上を流れる雲を見ていた。


自分について少し語ると、俺は、戦闘民族の長の息子に生まれた。

村1番の長の息子とあってか剣も魔法も一人前、年齢を考えれば優秀な部類に含まれている。

鍛錬を怠らず成長すれば・・・何度もそう言われた。

でもそれが嫌だった。

なんせ、それは、俺が戦うために生まれたと最初から決めつけられているようなきがして。

親父を含め家族は、そんなことない、好きなように生きろと言ってくれてはいるし、自分でもわかっているつもりではあった。


「それに、俺、臆病だしなぁ」


そうだ、ドラゴンなんて見ただけで震える。

せめて親父たちの助けにと思っても何をしたらいいかわからない、それを理由に逃げ続ける。

義務づけられた狩りも後ろの方で小さい魔獣を倒すだけ。

無理するななんて言葉は聞き飽きたし、大丈夫としか言えないこの口にも嫌気が差している。


才能なんてほしくなかった。

期待なんて要らなかった。

欲しいやつなんてそこらじゅうにいるじゃないか。

どうして・・・


「帰るか」


いつまでもここにいるわけにはいかない。

もうすぐ親父たちが遠征が終わって帰ってくる頃だ。

迎えの準備をしにいかないと。

それに・・・


「どんなドラゴンを狩ったんだろう」


戦うのは苦手だけど、見るだけなら大丈夫。

死してなお迫力のあるドラゴン。

それを狩った親父たち。

臆病でも優しくしてくれるし、その大きい背中は、幼い日からの憧れだった。

お前はお前だ、その言葉はずっと心に残っていて、その言葉は、心のありかにもなっていた。

いつか親父のようにとゆう幼い頃の願いは諦めてしまったけれど、あの背中を追い続けることだけはやめたくない。

そう誓っていた。

立ち上がりそんなことを考えながら歩いていると、


『ーーーーー!』


よく響く音が聞こえてきた。

聴き慣れた音だ。

この音は


「親父たちが帰ってきた」




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竜狩りの民の生き残り ミノケンタウロス @pf23

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