竜狩りの民の生き残り

ミノケンタウロス

第0話

本当は、怖かった。


勇気なんて言葉からは遠い存在で。


誰かの役に立ちたいけれど、何をすればいいのかわからないし、


何かやろうとする度胸もない。


恐怖を押しとどめるのが精一杯で、


大丈夫か、って聞かれても震えた体を押し殺し、大丈夫だ、と答える日々。


そんな日常だったから、忘れていた方が、楽だったし、


そもそも何かしようとする度胸がないから、


忘れていたことを思い出そうともしなかった。


記憶がなくても、深く考えたこともなかった。


むしろ思い出すことによって何かが壊れることが何倍も怖かった。


だから思い出したくもなかった。


けれど、そうはいかなかった。


あれを見てしまったから。


あれを見て思ってしまったから。


このままじゃ・・・だめだ、と。


行かないといけない、と。

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