闇の烙印 第二話(ウェイトレスと会話Ver.)
・モブのウェイトレスとは要らないと判断。ここまでに主要キャラが登場し切っていないのはテンポが悪い。
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「ご注文はお決まりですか?」
そこへすかさずむっちり美女のウェイトレスがにこにこしながらやって来た。もの珍しそうにパンダを見ながら水を置く。
小さな街だ、よそ者だということはとっくにわかっているのだろう。
「見ての通り俺様はこの街に来たばかりだ。メニューなど知らん」
ウェイトレスの視線にむっとしたように答えたパンダの視線を遮るように、鷹が前に出た。
その口を開く。
「肉がいいです、肉!」
「まあ! あなたペットじゃなくて使役獣なの⁉︎」
人語を解する獣は、即ち魔獣だ。魔獣は基本人と行動を共にすることなどない。それが叶う方法は、魔獣と戦って勝利し、使役獣として契約を交わすことだけだ。
「ええ。私は
「鷹……みたいなのにカラスって名前なの? かわいい」
「それはパンダ様のネーミングセンスが————」
「おい人前でその名を呼ぶなと言っているだろうが!」
声を荒げたもののあとの祭りだ。
パンダって独特だけど可愛い発音よねとウェイトレスはにこにこしている。
「でも気にしないでいいと思うわ、他にもパンダって名前の有名人がいるのよ」
「それです! ご主人様は、なにを隠そうあの宮廷魔術師サンタ様のご子息なんですよ、えっへん」
「え、本当⁉︎ 救国の英雄サンタ様の⁉︎」
「おいお前喋りすぎだッ」
むんずとカラスの首根っこを力任せにつかみ絞めるが時すでに遅し。ウェイトレスの瞳はすごいものを見たかのようにキラキラ輝いてしまっている。
「ギャーなんでですかっご主人様の美と才能は世界に広められるべきでしょう! ぐるじい!」
「あのクソ忌々しい
「だって知名度ナンバーワンじゃないですか。息子のためにその七光りを貸してくれたって良いはずですッ」
「そんなものは俺様にはいらん!」
救国の英雄。サンタを表す言葉の中で最も腹の立つ二つ名。宮廷魔術師として絶大な力を持ち、先の大戦で数々の戦果を上げたことは認めてもいい。だが。
思い出しただけで胸がざわつく。
「サンタ様のご子息って言ったら弱冠十六歳で支援魔術の天才って噂よね⁉︎」
「ざけんな俺様はそんな地味な魔術なんか興味ねぇんだよッ」
お前は宮廷魔術師としては未熟だな。そんな冷たい声が脳裏に蘇り苛立つ。女だからって適当な事を言うと容赦しない。
そう、あの女も気に食わない女だった。
「あ、あら。ごめんなさい」
「気にしないでください。ご主人様の短気はいつものことですから」
カラスはと言えばすました顔をして水を飲んでいる。
「いい気なものだな、飛べないくせに」
「それはご主人様がいけないんですよ。契約の時に、飛ぶ能力を封じるとかわけわかんないこと言うから」
「は?」
「普通は! 自由を封じるとか、絶対服従とか、魔法を使えないようにするとか、色々あるでしょう」
「そそそれはあれだ、美と才能有り余る俺様がお前ごときを絶対服従させたところで、面白くもなんともないからだ!」
あと幼かったから思いつかなかっただけだ、というのはぐっと飲み込んでおく。幼かったとはいえ、使役獣を下すには魔獣と戦って勝利し契約する以外に方法はない。それだけパンダは天才的だったのだ。
つまり、絶対服従など魔獣にかろうじて勝てたような運のいい凡人がすることだとパンダは結論付け、溜飲を下げる。
「私はいつでもご主人様の寝首を掻くことができるんですからね!」
「ならやってみろよ」
「ぐえッ……ぐぐ、ぐるじ……」
思わずカラスの首を鷲掴みにしてしまったパンダに、まあまあとウェイトレス嬢がなだめてくる。それに免じて手を離してやると、げっそりした様子でカラスが首を振った。
「ふふ、仲が良いのはわかったわ。ゆっくりして行ってね」
ウェイトレス嬢はそう言ってにっこりすると、ひらひらと手を振りながら仕事へと戻って行く。
「ところでご主人様」
「な、なんだ」
嫌な予感がして、ふいとカラスから目をそらす。
「路銀がもうありません。仕事をしましょう」
「仕事だと? この俺様が? 嫌だね」
「もー、わがまま言わないで下さいよ。なんだかんだ言ってお金を踏み倒すとか出来ないくせにー」
「はぁ? 俺様を誰だと思ってるんだそんなの朝飯前に決まっているだろう」
ウェイトレスがオススメだと出してくれたステーキにフォークをぶっ刺す。食事の時まで仕事にお金と、カラスはうるさすぎる。
そのカラスはといえば、じゃあこれからそうしましょうよと意外にも肯定してきた。
「それはあれだ、あとあと面倒なことになるからしないだけなんだからなッ」
「はいはい、じゃあ働きましょうね」
「う……」
パンダに服従するような契約にしなかったのが今更ながら悔やまれる。カラスがこんなにうるさい奴だとは考えもしなかった。
幼くして魔獣を下した才能がいけなかったのだろう。天才とは辛いものだ。
そんなことを考えながら肉を次々に頬張り、あらかた食べ終わると残りを皿ごとカラスの方へと押しやる。
「ありがとうございます」
「俺様の温情に感謝しろよ」
「もちろんいつもしてますよ! 美味しい食事を摂れるのも暖かい宿で眠れるのもご主人様が仕事してくださるおかげですから! うまいうまいモグモグ」
「わかっていれば良いんだわかっていれば」
こんな小うるさい相棒でも、いないよりは役に立つだろう。たぶん。飛べない以外にはなんの制約もないから、いざとなれば魔法を使わせることも出来る。
そのいざという時はおそらく来ないだろうが。
「仕事で活躍して、この街にもご主人様の美と才能を広めなくてはいけませんからね!」
没文章の供養塔 はな @rei-syaoron
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