じれじれすれ違いって良いですよね。実に良いです。
本作はそれに鬼畜展開も入るものですからもう大好物です。「桜の宮」の美しい描写や短歌に、人間の持つ醜い感情がよく映えます。
ヒロインの依夜姫は未来の夫である生成が大嫌いで、生成も依夜姫に冷たい。というか「ひどすぎない?」ってくらい生成は依夜姫に当たりが強いです。
そしてこれを「好きな子ほどいじめたいってやつじゃない?」って思いながら読むと大変にこにこできます。そのレベルの当たりの強さじゃないって人もいるかもしれませんが、私は「可愛いねぇ可愛いねぇ、それでもっと嫌われたら嬉しいの?悲しいの?今どんな気持ち?」とワクワクするタイプなので非常に美味しい展開ですありがとうございます。
とはいえ理不尽すぎる展開は私も苦手ですが、そこはご安心下さい。本作、それはもうちょうどいい塩梅となっておりますので、一度も「もう無理!」とはなりませんでした。ただただ辛辣な生成の振る舞いとそれに振り回される依夜姫の姿を楽しむことができます。
おかげさまでラストの方はどうなるんだと叫ぶことしかできませんでしたが、そのどきどきもまた一興。心の中で阿鼻叫喚を経て迎えたラストに大満足です。
思えばあっという間の11万字でした。追いかけながら「もうそんなに読んでたの!?」となるくらい夢中で楽しめるお話ですので、心掻き乱されたい方は是非!