第4話 学食にて

 学食はまだ混みあっていない。後一時間もすれば行列が出来るだろうけど今は2限の最中の為か人は疎らだ。

 「じゃあB定食で。」

 「私もB定食で。」

 B定食はこの大学で一番豪華な定食だ。一食1500円と学生が頼むことはあまりない。だから学生間での奢りはこの定食を注文することが多い。

 「日替わり定食も美味しそうですよ?お二方。」

 困った顔で話す話す正孝。

 「日替わり定食も魅力的ね。でも私はB定食で。」

 「今日の日替わり定食はミックスフライか。確かに美味しそうだね。でも僕はB定食でお願いします。」

 「3000円...」

 「なんとなく楽しくない課題を自分でやれば今日の出費は0円だったでしょうにね。」

 「汐梨ちゃん駄目だよ。僕らの昼ご飯が無くなっちゃう。」

 「そうね。課題を自分でやるだけでお昼ご飯が付いてくるんだもの。」

 「...次回から自分でやります。」

 よろしい。僕と汐梨ちゃんが口をそろえて言う。


 定食を受け取り席に着く。

 「で、世界滅亡のニュースが出てたけど何年後だっけ?」

 「3年後だっけ。本当に終わってしまうのかな。」

 「3年もあればなんとかするのではないかしら。」

 話題は昨日の夜のニュースの話になった。

 「どうなんだろうね。結局何もないんじゃないの。」

 「終わるとしたら世間はどうなるんでしょうね。」

 「俺だったら仕事を辞めて好き勝手するね。」

 「僕は結局仕事を辞めず働いてそうかな。」

 「そもそも私は職に就くのかはわからない。」

 以外に思ったのは汐梨ちゃんの回答だった。真面目な汐梨ちゃんはきっと働くのだろうと。勝手にそんなことを思っていた。

 「汐梨ちゃんにそんな選択肢があったのは意外だね。」

 「さっきの何で大学に通っているかって話に戻るけど大学は好きなことを学べるから進学を選んだって言ったけど働くって選択肢もあったと思うの。でも好きなことをしたいから進学をしたんだ。だから今は趣味の延長線のようなもので将来こんな仕事をしたいからって理由で進学はしてないの。」

 「なるほど、俺はモラトリアム?を楽しみたかったからかな。まあ、趣味って話をしてたからそれに倣っていうなら高校生以下の、なんていうか、決まった習慣の生活をするんじゃなくて自由に自分の生活をすることが楽しそうだったからでその生活の中に趣味だったりバイトだったり、だらだらしたりがしたかったから大学に入学した。正孝は?」

 「なんとなくだよ。右に倣えというか、今後の生活の為。」

 結局はなんとなくなんだ。やりたいことがあれば専門学校だったりに行っていたと思うのだ。健のモラトリアムの言葉はなんとなくしっくりくる。楽しむためとか趣味の延長線上とかでは無いが将来何をやるかの先延ばしなのだ。

 「そうね。きっと大部分の大学生は私たちの様な考えで進学を選ぶもの。私たちは何かになる為に今を過ごしてるのかもね。」

 「いや、でも、何ていうか、きっと大学生だけじゃないのかもしれないよ。社会人なんて俺らより数年早く生まれただけだと思うんだよ。何かになるっていうのは人にとっての最大のテーマなのかな。」

 「だとしたら僕たちはその『人生のテーマ』を3年以内に決めて行動しなきゃいけないのかもしれないわけだね。」

 「終活近いわね。3年で世界が終わるのだもの。」


 これからの時間はきっと大事にしなければいけないのだろう。僕たちの時間は無限に思える時間からたった3年に変わったのだから。有限に変わったのだ。3年後の終わりの日に動きだしたのだ。僕はどのように終わってしまうのだろとふと考えるのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

終末のエンドロール 雨野河童 @amenokappa

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ