乳首見えた?
今日は同じクラスの問題児、モデルの白坂キラの家に呼ばれている。
タワーマンションで一人暮らしをしているキラ。
大きな鏡がいくつも置かれていたり、美容グッズや美容器具が無数に置かれていたりとツッコミどころが多い。
だが、その中でも一番気になってしまうのはキラの服装だ。
キャミソールを着ていて肩が露出しており、胸元も大胆に見える。サイズも大きめなのか、少し引っ張ればすぐに脱げてしまいそうなほどだ。
「キラって屋内だとけっこう薄着というか、ラフな格好な時が多いな」
修学旅行で沖縄へ行った時にも、キラの服装が気になっていた。
野外では紫外線を意識して羽織ものを着ていたが、屋内では羽織ものを脱いでノースリーブの着ていたりとやけに露出が多かった。
やはりモデルで自分の綺麗な身体を見て欲しいと思っているから、露出は多めにしているのだろうか……
「部屋着だと薄着の方がすぐに脱げて身体のラインとかチェックできるじゃん」
「な、なるほど」
どうやらキラは家だと服を脱いで鏡で身体をチェックすることが多いらしい。
常に服を脱ぐからこそ、脱ぎやすいラフな格好でいるみたいだ。
「私の身体がそんなに気になるの?」
「いや、その、目のやり場に困るというかな……つい見てしまって不快な気持ちにさせたら申し訳ないなって」
「私の名前をネットで検索すれば水着姿とか出てくるわけだし、服から露出した部分なんて見られてもどうってことないって」
キラはモデルの仕事をしていたので、見られることには慣れているようだ。
「薄着だと、大事な肌を傷つけたりしないか心配にならないか?」
「これ見てこれ」
キラが指さした箇所を見ると、家具の角にわざわざ緩衝材が付けられていた。
きちんと対策をして、肌を守るための工夫が施されているようだな。
「おわっ」
急に足に何かがぶつかり、驚いて変な声が出てしまった。
「ただのルンバだよ、ビビリすぎ」
俺の足に当たったのはお掃除ロボットのルンバだった。
家で動いているのは初めて見たな。
「一旦、止めておくか」
キラはルンバの方へ手を伸ばす。
身体が柔らかいのか、しゃがまなくても足元に指が届くようだ。
俺の前で前屈みになっているキラ。
ラフなキャミソールを着ているため、胸が丸見えになってしまっている。
柔らかそうな綺麗な胸……
微かに見えるその先端……
いや、先端が見えそうってことはキラはブラをしていないのか!?
俺はキラに気づかれる前に目を逸らし、壁の方を眺めた。
普通に胸を見るより、服の隙間から見えてしまう胸の方が何倍もエロく感じるのは何故だろう……
「はい停止っと、ってどこ見てるの?」
「胸が見えそうになったから目線を逸らしてた」
「えっ、まじ?」
事故とはいえ、胸を見たなんて言えばキラもショックを受けるはずだ。
ここは黙っておいた方が良いな。
「ちゃんと見ないように逸らしてくれるとか、流石は茂中さんだね。金田だったらガン見してただろうに」
「……もっと気をつけた方がいいぞ」
「そうだね。でも、せっかくのラッキースケベチャンスだったのにもったいないよ」
いや、本当はチャンスはものにした。
チャンスをものにしつつ自分を守るなんて、俺は卑怯者だな。
「無防備にもほどがあるぞ。ブラとか付けてないのか?」
「家だとね。まぁキャミソールって胸とこにパット入ってるからブラの役割もあるけど」
「そういえばそうだったな。アリスが着てたのもそんな構造だったのを思い出した」
キャミソールは薄着といえど、胸が透けて見えることはない。
だが、かがむと見えてしまうことはキラも想定外だったか。
「まぁブラは欧米だと外でも付けてない人は多いよ。海外だと道歩いててもブラしてないから乳首透けてる女性も多いし、ハリウッドスターだって私服の時に透けてたもん」
「そんなものなのか」
「逆に欧米だとミニスカートとか、下半身の露出は控えめなんだよね。胸はほぼ見えるぐらい出すけど、下はほどんど出さないって感じ。欧米からしたら下半身の露出が多めの日本人はけしからんって感じらしいし」
やはりモデルの仕事で海外にも行っていたキラはグローバルな考えを持っているな。
俺が知らない世界の常識を教えてくれることも多い。
「ちょい昔の海外の映画とか、胸とか普通に出しちゃってるの多いし」
「そういえばそうだな。テレビで映画見てたら胸が見えてビックリした時もあった」
子供の時は洋画の胸が出るシーンにめっちゃドキドキしてしまったな。
家族と見ていた時は地獄の空気になってしまったが。
「前にニューヨーク行った時なんか、胸丸出しでデモ活動している女性たちがいっぱいいたよ」
「まじか……恥ずかしくないのかな?」
「欧米では胸が見えてもそこまで恥ずかしくないって人も多いんじゃない?」
「欧米気質なキラもそうなのか?」
「まぁ、私も大人だからね。胸一つ見えてギャーギャー騒ぐほどではないかな」
余裕な表情を見せているキラ。
どうやら俺はキラを見くびっていたようだ。
「……そっか、じゃあ実はさっきちょっと見えちゃってたけど、別に隠すほどでもなかったのか」
「えっあの時、見えてたの!?」
予想していた反応とは異なり、顔を真っ赤にしている白坂。
「ちょっと待ってよ! 何勝手に見てんの!?」
ギャーギャー騒ぐほどではないというさっきの言葉はどこに行ってしまったのか……
「おいおい、恥ずかしくないんじゃなかったのか?」
「えっ、あっ、うん、ぜんぜん、まぁちょっと見えちゃったくらいは」
恥ずかしさを否定しながらも手で胸を押さえているキラ。
言っていることとやっていることが違う。
「すまん、申し訳ない」
「謝らないでよ。べ、別にどうってことないし」
キラは本音を隠して建前を話すことが多い。
きっとそれは常に理想の自分を演じているからだ。
そういう意味では少し俺と似ているところもあるのかもな。
「じゃあ、むしろありがとうだな。とても美しいものが見えたから」
「そ、そうでしょ? 茂中さんには特別に一回だけ見せてあげたんだから。もう次は無いからね」
「そっか、今日の俺は幸運だったな」
「私の家に来ている時点で幸運だから」
前にクラスメイトから幸薄そうな顔をしているとか言われたが、実際には幸運らしい。
「これからも私と一緒に居れば、もっと運が良い事も起こるかもよ」
何かを期待させるキラの一言。
「……なんつって」
キラは冗談で締めくくったが、それも建前で本音が隠れているのだとすれば……
いや、それは俺のとんだ自惚れかもな。
問題児の私たちを変えたのは、同じクラスの茂中先輩 桜目禅斗 @Sacrament
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