第二話 「イケメンとガキ大将」
拙者はヨタヨタとうつ向き加減で家に帰り、己の部屋に入るとバタッと倒れ、ぐったりした。そして、学校生活のストレスで、かれこれ一時間ほど寝そべっていると、突然姉のみーふぁが拙者を起こしに駆け寄ってきたのでござる。
拙者はそれをいつものように無視しようとしたでござるが、みーふぁの様子がおかしく、怯えて大量の冷や汗をかき、たどたどしい声で「知らない人がインターフォン鳴らしてるわ。みてきて」と拙者に玄関の前を偵察してくれと指示をだしたのでござる。
拙者は思わず「イヤに決まっているでござろう!!・・・自分でいけよ」と寝転んだが、みーふぁの目から、ぶえーん。ふえーんと。ハリケーンがもたらす大雨のように大粒の涙がしたたり落ちていることに気づいたのでござる。拙者は思わず、とんでもないことをしでかしたと思い「スマナイ、スマナイでござる!!」と急降下するジェットコースターかよと見間違えるほどのスピードで頭をさげ謝罪したあと、偶然掘り当てた温泉を彷彿させるほどの汗をふき出しながら玄関まで猛ダッシュした。
玄関のドアをガチャッと開けるとそこには巨漢の小学生がいた。右胸にある緑色のバッチから察するに桶狭間小の六年生の男児でござる。拙者はオドオドしながら玄関の前に突如出現した謎の上級生を前に思わずのけぞった。そして「オヌシは何者でござるか!?」と未だに止まらない驚愕する感情を抑えながら、たずねたのでござる。
すると、謎の上級生はニヤニヤと笑いはじめ、拙者に戦慄が走るなか、奴はある暗号を口から吐きだしてきた「この俺様を知らないだと?カラスのかーちゃんだって俺の名前を知ってるぜ」これはもはや宇宙人でも解読不可能でござる。
理解が追いつかなかった拙者は天地がひっくり返るほどのパニックをおこし、地震レベルの震えが止まらない声で「・・・カラスのかーちゃんって誰でござるか?」と聞きかえした。
すると、上級生は再び二ヤリと笑い、拙者を下等なサルを見るかのような顔をすると「この俺が知ってるわけねぇだろ。ははは。バカだな。お前!!」と突然ミサイル着弾の如き破壊音をだしながら大声で叫んだ。
その直後のことでござった。拙者は不覚にも0.00001秒の間にあることを悟った。・・・この者、異次元のバカだと。
そして、ふと拙者がうしろに目をやると、この者の手下が六人もいる。しかも、そのうちの一人はメチャクソのイケメンで天下のジャニーズ系アイドルも真っ青になるか、ショックでアイドルを卒業してしまうレベルでござった。そこへ拙者の姉のみーふぁが後ろからノコノコとやってきたのでござった。すると、みーふぁは顔をトマトのように真っ赤にして「金次郎君!?・・・なんでここにいるの?」とたずねた。平常時の姉が絶対しないような動揺を目の当たりにして拙者はあることを悟った。・・・ずっと前から、おそらく入学式のときから、姉はこのイケメンに恋に落ちていたということを。そして、拙者の脳裏にCrystal Kayの名曲「恋におちたら」が流れはじめたことは言うまでもない。
結末はまさかでござった。金次郎はなんともいえない神妙な面持ちでみーふぁの顔を見て「・・・あんた。誰?」とボソッと強烈な一言をあびせたのでござった。みーふぁは小学五年生にしてあまりにあっけなく玉砕を果たすのでござった。そして、その後、しばらく姉のみーふぁは涙すらださずに干からびた顔をたもちつつ呆然としたのでござった。
すると、このカオスな状況を宇宙の彼方へぶっ飛ばすかのように「ははは」と勝家が突如、激しい高笑いをした。勝家は突然天高くそのブサイクな顔を突き上げて「実は今日。お前らの家に押し入ったのには理由がある!!」と叫んだ。そして、このあと、今どきヤンキードラマでしか聞かないようなパワーワードを吐いた。そのパワーワードとは!?「今日からお前らは俺らのダチだ」というまさに銀河系を震撼させるぐらい破壊力のある宇宙一のパワーワードでござった。それをこの男が恥ずかし気もなく言い放ってきたのでござる。
姉のみーふぁの表情はドン引きと失恋のダブルパンチでどこぞの神の銅像と同じぐらい険しい表情と不穏なオーラを放っていた。しかし、拙者は違っていた。なぜなら、喉から手が出るほど友達がほしかったからでござる。素直な気持ちで嬉しく、気分は晴れやかかつ、ウキウキでござった。
その日。拙者は勝家たちとド派手に遊んだ。本当に切腹レベルで楽しかったでござる。
遊びが終わったあと勝家は「ははは。今日も楽しかったな」と大爆笑。そして、笑い終わると、勝家は拙者とみーふぁの顔を覗き込んで「ところでお前らの名前なんて言うんだ?」とおだやかな口調でたずねた。そして、待ってましたと嬉そうに拙者は「ふぁたけでござる!!」と拡声器5個ぶんの職員用トイレでは100%、いや120%叫ばないぐらいのはんぱねぇ大声をだしたでござる。
すると、まさかの出来事が勃発する。そこにいた勝家のチビ版と言うべき者が「ぇぇええええ!?」とサイレンのように大声を張り上げたのでござる。その声は勝家とは似ても似つかぬ甘ったれた声でござった。「兄ちゃん。そいつ!!・・・僕と同じ名前じゃない。僕たちのグループに入れるのやめようよ!!」とウザカワイイという言葉がよく似合うチビ助が地面を何度も踏んづけながら叫んだのでござった。
まさに寝耳に水とはこのことでござった。「兄ちゃん???まさか!?勝家の弟と同じ名前!?」とあまりに予想外のできごとに拙者はキョトンしすぎて黒目がなくなった。そして、「いけねぇ。いけねぇ」と拙者は黒目を自力で復活させたのでござる。
この事態をうけて勝家は「ははは」と笑い転げた。なおも笑いつづけて「なんてこったい。お前は俺の弟と同じ名前なのかい??・・・よし!!決まったぜ。お前の名前はふぁた弐だ!!」と唐突に拙者は意味不明なあだ名をつけられてしまったのでござる。
拙者は「はぁああ!?」と核兵器ばりの破壊的な大声をだしたあと「なんで拙者がふぁた弐でござるか」と動揺して早口になり、ツバという弾丸をマシンガンのように飛ばし文句をつけた。
すると、勝家は一瞬考えるそぶりをして「・・・不満か?じゃあ、俺の弟は今日からふぁたワンと呼ぶとしよう!!」としわくちゃな笑顔で言った。
それを聞いてふぁたワンは「そりゃないよぉ。ぶぇぇええええん」とアニメかよとツッコミをいれられそうなぐらいの涙を噴水のように噴射した。
ちなみに、拙者の姉であるみーふぁは沖縄サミットネヴァーエンド号というヤバいあだ名をつけられ、拙者は家に帰るなりみーふぁから勝家の悪口を大声で散々聞かされた。その日は楽しかったのに加え、みーふぁにやつあたりされたことが原因で頭が疲れてガンガンとしていたので、気絶するように熟睡したのでござる。
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