第41話 一つのことを追求しよう

改革チームで手分けしてフレデリックさんを捜索したところ、

私が見つけました。


ここは倉庫の裏でしょうか?


狭いスペースで器用にベースを弾いていますフレデリックさん。

リズムに合わせて魔法回路がシートに焼き付いていきます。

これは『ELECTRIC EYE』のアレンジでしょうか。


フレデリックさんがこちらに気づきました。


「アンタか。笑いに来たのか? どうせ俺は正しい判断なんてできねぇよ」


「その割には、ハーマンさんとバチバチに口論していましたが」


「反省してるよ。俺の言うことはいつも間違いだらけなんだ。熱くなってたたかっても、本当は何の意味もない。流されたくないから戦いたくなるけど、それはそもそも流されやすいから、だよ」


ここで『適正ですよ』と言ってしまえばそれまでなんですが、どうにか味方になってもらわなきゃいけないんですよね。


どうしたものか。


「フレデリックさんは、これからどうしていきたいんですか?」


「あの時代に戻りたい。俺はベーシストで良かった」


この辺、とっかかりになりそうですね。


「あの頃の何が良かったんですか? 逆に今の何が悪いんですか? 具体的にお願いします」


ここで躊躇してはいけません。

フレデリックさんをガッチリ捕まえますよ。


フレデリックさんは青空を見上げながら、ポツリポツリと呟いていきます。


「あの頃は、なんというか、本当に良かった……」


『良い』という表現に、言葉の重みがありました。


「楽しい? 面白い、の方が近いか。決してラクじゃねえ。週末は疲れてたし、月曜日は憂鬱だった」


フレデリックさんはベースを止めずに語り続けます。


「一番燃えていたのはな……弊社が主導で、5社の馬車のエアバックの規格統一を目指していた頃だな。

 朝から晩まで何パターンも回路を作った。何通りも演奏した。ベースもズラっと並べてな。腕の問題なのか、音色の問題なのか。乱数なのか。分析しては議論を繰り返した。簡単なテストは俺一人でも作れるが、いよいよ人を呼ばないと調査できねぇ、ってなってからは、他の魔法使いとも何度も議論して、ここぞと言うところで編成。大編成になったときもあるな。人を集めてテストして、回路制作が安定したら、今度は回路そのものの小規模化。それと魔法使いもどんどんシステムに置き換えていった」


フレデリックさんがこんなに喋るのを見たのは初めてです。

青春を語るお爺さんみたいですね。


「あの時は、社内政治なんて皆んながかなぐり捨ていた。予算を使わせてもらうためにさ、役員に直談判しにいったこともあるよ。もちろん突撃だけじゃ突っぱねられた。だから上司とすぐ横のレビューコーナーで資料作って、大編成やホールや派遣魔法使いの必要性を見える化して説得したんだ」




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剣と魔法の世界で営業マンとして楽器を売る話 石田金時 @toshikintoki

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