第12話『予備校』
美術予備校に通ってた時の話です。私、3年生から予備校に通い始めてそれまでは独学だったんですよね。まぁ経済的な理由ってやつです。
だからみんなと比べてすごく下手で……。
デッサンをするんですけどね、石膏像の。全然上手く描けなくて毎日夜遅くまで残って手直ししてました。
その日も遅くまでデッサンをしてたんですけど、どこがどう悪いのか全然わからない。それでもう、美大受験やめちゃおうかなぁとか思ったんですけど……そん時「顎の角度もっとキツくない?」って声かけられたんですよ。振り返ってみたら声の主は同じ予備校生のIちゃんでした。すごく上手い子で、講師の人たちからも良く褒められてる子です。
今まで話したことなかったのにどういう風の吹き回しだろうと思いはしたんですけど、よく見てみたら実際顎の角度が緩すぎたんでお礼を言ったんですよ。
そしたらなんか、Iちゃんニコニコしたまま窓の方に歩いて行って……そのまま落ちちゃったんです。
私それはもうびっくりしちゃって大慌てで外に出たんですが……そこにはIちゃんの死体みたいなものはどこにもありませんでした。
怖くなって家に帰って、翌日恐る恐る予備校に行ったんですが、Iちゃんは普通に元気に来ています。
それで私が「昨日大丈夫だった?」って聞いたら「何が?」ってキツい口調であしらわれちゃいました。
あのIちゃん、結局何だったんですかね。
したたる百物語 28号 @7seen
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