第75話 エピローグ

— 茜の自宅 —


「ねぇ、茜、お父さんを起こしてきてよ」


「なんでぇ。お母さんが行ってよ。今、TV観てるんだから」


「いいから、いうことを聞きなさい! これから留美子おばさんがくるんだから、あなたもちゃんとしなさい」


「げっ、マジで。あの留美子おばさん来るの?」


「そうよ。あなた、ちゃんとしないとまた小言言われるわよ!」


・・・・・・

・・


それから2時間後にお母さんのお姉さんである留美子おばさんと従妹の香菜さんが訪ねてきた。


留美子おばさんは来るなり凄い圧でグイグイと私の近況を聞いてくる。そして「茜ちゃん、あなたね―」といつもの調子で小言のようなアドバイスをくれた。


あ~! 苦手! 私は逃げるように隣の居間で赤ちゃんをあやす香菜さんの所へ逃げた。


「ごめんなさい、茜ちゃん。茜ちゃんのところに来ると変にお母さん張り切っちゃうのよね。適当に返事してればいいからね」


「はい、そうします。ありがとうございます」


「あははは。茜ちゃん素直だね。 あら、この子 泣き止んだわ。ずっとグズっていたんだけど.... うん、もう大丈夫みたい」


「可愛いですね。女の子ですか? 名前は何て言うんですか?」


「優しい子になってほしい意味を込めて『依美(つぐみ)』」


「依美ちゃん、初めまして」


依美ちゃんは私の指をその可愛い指で握ってきた。 そして可愛い笑顔を見せてくれた。


「茜ちゃんの事が好きみたいよ」


「そうなんですか? うれしい」


「ほら、茜ちゃん。何となくだけどミントの香りしない? この子生まれた時も何となくスーッとミントの香りがするの。すごくうれしい時にするんだよ」


「 ..そう..なんですね。よかった.... ほんとうによかった」


「どうしたの? 茜ちゃん? 何でそんなに泣いてるの?」


「私、すごくうれしいんです。まるで歳の離れた『妹』ができたみたいで」


依美ちゃんはキラキラした目でキャッキャと笑っていた。


***


異世界では森に身を隠しながらミゼは生きていた。 町に行っては人のものを盗み暮らしているのだ。 そんなミゼもまた人間なのだ。


悪人をどうするかはその世界の正しい秩序の中で裁かれていけば良い。


その秩序を悪意の中、捻じ曲げようとするならば、銀色の髪、エメラルドに光る拳、白色の瞳を持つ者が再び現れるに違いない。


最後にアカネとリュウセイの闘いの最中、デュバーグ砂漠にシエラが植えたサイフォージュの芽は、今もすくすくと成長している。


【 時の狭間の白い手を~時の加護者のアカネの気苦労 完 】

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時の加護者のアカネの気苦労Ⅰ~時の狭間の白い手(2023/8改訂版) こんぎつね @foxdiver

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