秋の薔薇 🌹

上月くるを

秋の薔薇 🌹





 いつものカフェの駐車場に前向きに停車する。🚗

 降りると、細長い花壇に淡いピンク色が少し。🌿


 ん? なんだろう、近寄ると、タフな植栽に押され気味の小さな薔薇の花だった。

 人に見られるのを避けるように、地味で目立たない小粒のつぼみと花が五つ六つ。


 でも、どんなに隠れても薔薇は薔薇、わずかな風に堅い蕾がちりりと鳴いている。

 可愛いね……腰を屈めたら、思いがけず込み上げるものがあった。(´;ω;`)ウゥゥ


 いまごろ可憐な花を咲かせても、秋は素早く通過して苛烈な冬がやって来るのに、どうしてもっと早くスタンバイしておかなかったの、おばかさんのおチビさんたち。




      🍐




 なにも答えない薔薇の花の代わりに、大切な人たちの面影が脳裡をよぎってゆく。

 大丈夫、健気な秋の薔薇に寒風が吹きつけたら、わたしが盾になって守るからね。


 って、あんた、いくつだと思ってんのよ~、とっくに守ってもらう側でしょうが。

 いつまで母や祖母や姉や叔母をやっているつもり? まったくおめでたいわね~。


 シニカルなセルフツッコミには知らんぷりして、薄い秋の日ざしをまとった小さな薔薇の花を見ていると、ま、いっかあ、思うのは勝手だし、ケセラセラだし……と。


 こんなところで、凡庸でちっぽけなわたしごとき人間が足掻こうが足掻くまいが、社会にも地球にも宇宙にも痛くも痒くもないんだし、なるようになるんだし。('ω')


 


      ☕




 じゃあね~、薔薇の花たちに告げカフェのドアを押すと、常連さんがニッコニコ。

 同年代の男性客が「おはようございます!」ほがらかにご挨拶をしてくださった。


 いつも窓際席に座っている男性のプロフィールはもちろんお名前も存じ上げない。

 奥まったボックスの女性、そのとなりの男性と女性、みなさん、どこのどなたか。


 たまたま同じ時間帯に通うというだけの間柄だが、妙な連帯感が生まれつつある。

 身内という濃い関係と、常連同士という淡い関係……人間のつながりって面白い。




      🌞




 定位置から外を見ると、さっきの薔薇の花にライトのように陽光が当たっている。

 そっか~、自然には自然の恵みがあるんだ……ホッとしてモーニングをオーダー。



 ――黙っていても歳月は降り積もるんだから、先取りする必要はないよね~。

   わたしたちは同年代のドンジリを目指しましょうね。ヾ(@⌒ー⌒@)ノ

 


 どちらともなく言い出したキャッチを合い言葉にしている、ひとまわり年上の先輩も間もなく見えるだろう、まるい頬をほころばせ、若々しい笑顔をふりまきながら。





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