バラシ 蛇足の火葬
あとがき。途中で書ききれなかった思いの丈を吐き切る場所。意味が分かりづらいところに注釈をつけておくところ。一見必要であり親切なものである。でも。一度蛇として完成させたものに付け足すことは余裕を見せて酒を得られなかった哀れな人になってしまう。つまりわざわざ付け足すということはそれまでの評価を失う恐れがあるということを指している。しかしまだ書き足りないことが溢れてくる。まだあいつを喪うわけにはいかなくなった。
今度はわかってる。これは妄想で空想。ありえないこと。だからこそ、俺は舌禍メカに頼りたい。不条理、不平、不満、不愉快等を嘆くために。その怒りを吐き出すために。だから今だけはもう一度、鮮明な爆発を見せておくれ。
「空想の産物を頼るなんテ。既にイカれてますネ。」
だとしても構わない。頭の中のロボットだって会話してでも私はこのくそったれな世界を生きねばならない。生きる意味などなくともだ。そんな感情を持っていれば当然腹の中には澱みが溜まる。普通の人間ならば澱みを吐き出す。吐き出せる。でも私はそうじゃなかった。ただ澱みを無視していただけだ。不思議と澱みはだんだん透けてくる。まるでなかったかのように。よく見るとある。だから腹の中はいつだっていっぱいだ。そうしていつのまにか食べることすらできなくなってる。
全てを投げ出したくなっちゃったんだ。
ヒモには才能がいるという。それもそうだろう。まずヒモになれるかどうか。それを継続できるか。そして、ヒモになっている相手に対して罪悪感を抱かないか。
私はダメだった。いつもいつも勝手に相手が迷惑そうにしてる想像ばっかりしてしまう。
別に相手はこちらを思ってしてくれていることのはずなのに相手にさせてしまったと。そう解釈してしまう。褒め言葉だってそうだ。澱んだ体をいくら褒められたところでひとっつも嬉しくはない。全て世辞でしかない言葉の羅列だ。たまに私は責任感を一切持ち合わせない人間になったらと考える時がある。
その時でさえも私は人に義を通そうとする。
頭の固い私は世の中をうまく生きていけないのだ。一度楽になったらどうだ、と言われても頭が勝手に拒否をする。そんなのだから柔軟性の欠片もない精神異常者に成り下がってしまうんだ。稀にいるちゃらんぽらんな人を見て自分はああはなってはならないというのとああなって自由に生を謳歌したいと縛られる。二律背反。ダブルスタンダード。社会は
そうやって人を抑え込む。そうしなければ、廻らなくなるからだ。
だから教えておくれ。そんな殺されたままの俺が。どうしたら蘇ることができるのか。
結局は自分を満足させられることが全てだ。けれど自分だけを優先してしまうのは俺の
本能の俺よ。
自分を縛るのは自分自身。欲求を抑えつけるのは理性だ。そいつさえ消えちまえば全てはハッピーエンド。そう。だから私は、俺は、
「わかりましタ。」
「今からは俺が全部動かすってことでいいのかイ?兄弟?」
あぁ
「んじゃ邪魔なモンは全部取っ払っちまうカ」
評価?他人の目?知ったことカ。
見てえやつが俺を見ル。見たくねぇ奴は視界に入れんじゃネエ。それで充分じゃねえカ。
少なくとも俺はそう信じて生きル。
そうでもしねぇと兄弟が報われねぇからナ。
つまるところ人間はスイッチ。
ちゃんとしたやつは自動で切り替わル。
切り替えて日々を過ごせル。
でも不完全な俺たちが生きるためにハ。
頭をイカれさせちまうしかねぇんだヨ。
でもショートしないようニ。
壊れちまった奴から脱落ダ。
また一つ。稲光が楕円の骨の隙間に走る。
その鳴動は頭蓋を揺らす。確信。革新。
核心を突くそいつはもうただのエゴ。
あとはブレーキが外れた暴走車両。
願わくは。どうか不器用なやつでも生き延びられる世界が来世にはありますように。
舌禍メカ 玄葉 興 @kuroha_kou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
小さな呻き/玄葉 興
★0 エッセイ・ノンフィクション 連載中 5話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます