役立たずの抵抗

@akakichi

第1話

手が震えてる。身体が火照る。周りの目線に殺されそうだ。でも、逃げられない。私の屍を乗り越えてこの球技大会を優勝に収めさせるんだ。

「ユリ先輩やっぱりここで出してきたね」

ペアを組んでいるみゆちゃんに声をかけられてた。

「うん、なんかもう圧で殺されそう」

横目に座って応援しているクラスメイトたちを見た。負けても大丈夫と開始前に散々言われたが抵抗はするつもりだ。

「試合開始!」

タイマーのブザーと審判の声が試合開始を告げる。開始前のじゃんけんで負けたからシャトルはあちら側にある。

パンッ!!!

二人の間をシャトルがかすめていく。まだサーブなのに追いつけない。これがあと十回も待ち受けているのかと思うと寒気がする。あちらの応援席からは歓声が聞こえる。それに対するこちら側の沈黙はプレッシャーとなって私を押しつぶしてくる。

「大丈夫まだ一点だよ」

「そうだね」

声を互いにかけたが意味はないと思う。続く二回目のサーブも追いつくことはできなかった。強敵と戦うと息は上がるのかとよく思われるが実際は圧倒的な実力の差に動くこともできない。むしろ呼吸が上手にできなくなる。


そして試合は続けられていく。

パンッ……パン!!

跳ね返した。

みゆちゃんが先輩のサーブを跳ね返した。みゆちゃんはいま少し後ろにいるから前に一歩出る。ユリ先輩はサーブを打ったから後方にいる。そしてみゆちゃんの打ったシャトルは前方に落下中。つまり今目の前にいる先輩はユリ先輩ほど強くないから絶好のチャンス。目の前にきたシャトルを相手コートのネットすれすれに打ち込めばいいはず。いや、私はバド部じゃないから頭でごちゃごちゃ考えても無駄なのだが。

「上手くいってくれ―――」

トンと乾いた音が小体育館に響く。

たった一点、されどこの一点は忘れられない一点になった。結果として試合は負けてしまった。しかし、私たちのペアはあくまでも屍なのだ。第三ラウンドのペアに代わり強敵に打ち負かされるだけの役割。一点でも取れただけで満足なのだ。

「お疲れさまやっぱり負けたね」

試合後にみゆちゃんに声を掛けた。息は上がっていたが顔はにこやかだった。

「うん」

コートに私たちの最後の砦とも言えるペアがやってきた。彼女たちなら心配は要らない。私とみゆちゃんは静かにコート横の応援席に戻った。

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