天使のような奥方は、仮面を使いこなす

読了後、誰もが呆然となること請け合いです。詳しくは書けません。ネタバレになってしまうからです。

かつて、その地一帯を治めていた高貴なる血筋の娘、アレスターシャは、ある成金の御曹司の元へと嫁ぐ。
ところがその成金の御曹司ことフェオドリーはびっくりするくらい「クズ」で、遊蕩にふけり、自尊心だけが高く、アレスターシャを蔑む上に浮気を繰り返す不実な男だった。その母ライサも息子のフェオドリーべったりかつ過干渉で、表面上はにこやかに接してはいるが、アレスターシャのことを内心は疎ましく思っている。フェオドリーの父はまだまともではあるが小市民気質であり、アレスターシャの持つ血筋を使って自分の家を「本当の貴族」にしようと目論んでいた。

家庭に居場所がなくなりそうなアレスターシャだったが、その謙虚で慎ましやかな振る舞いにより、使用人達からは絶大な人気を誇っていく。

……という、今の流行り物の、女主人公が虐げられて苦しみ、しばらくして離婚をして辺境でスローライフをしたり皇帝に見初められて溺愛されそうな前提があるのですが、物語の展開はびっくりするほど違ってきます。
様々な視点の人物が見る「アレスターシャ」の姿が微妙に違っているのです。ある人物の視点では慈悲深く侍女のミスも寛容に許して宝石を与え、ある人物の視点ではは途轍もなく賢い部分を見せる。そしてある人物の視点では——。
アレスターシャは不憫なだけの女では無い。虐げられるだけの女ではなく、いやむしろ——。

途中までは喝采を叫んでいましたが、最後は震撼しました。でもアレスターシャに、奇妙に惹かれてしまう部分もあって……。

読み応えのある作品です! ぜひご覧になってください!