第2話

あのとき、頃視野に心の底から感謝した。

だって借金に苦しんでる俺の身代わりになってくれたんだから。

俺はもう終わりだと思ってたから。

もう死ぬのかなと思ってたから。


でも日が経つほどに猜疑が芽生えた。

大学が一緒なだけの奴の身代わりになる人間なんているか?

何か裏があるんじゃないか。

何か俺にとって良からぬ企みがあるんじゃないか。

ある日突然、借金が倍になって俺に戻ってくるんじゃないのか。


そうしたら居ても立っても居られなくなった。

恐る恐るあの屋敷の近くまで行ってみた。

キャップにサングラスしてマスクして、念には念を入れて夜に見に行った。


すると頃視野が出てきた。

黒いロングコート着て、一瞬、頃視野だとわからなかった。

そのあと屋敷の部屋のカーテンが動いた。

一番大きな窓だったから親分の部屋だとわかった。


見つかったのかと焦ったが、親分は奴の背中を見てたんだ。

驚くことにうっすらと笑みを浮かべてた。

まるで子を見送る親みたいな顔してた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る