第4話

「お前、あのときのガキだろう。頃視野のことを嗅ぎ回って何してる? 何が目的だ?」

親分は俺が誰かに雇われてるんじゃないかと疑っていた。

嘘をついてもしょうがないので俺は本当のことを言った。

「別に。何もしてない。目的もない」

「ふーん。まあいい。お前も殺し屋になるか? 最近、人手が足りなくてな。頃視野がいい仕事をするもんだから依頼が増えてんだよ。どのくらいやれるか俺に見せてみろ。俺がお前に金をやるよ。そんなみっともない身なりして金がないんだろう」


みっともない?

その言葉で頃視野の姿を思い出した。

黒いスーツに黒いロングコート。

だらしなく着ていたが、様にはなっていた。


親分の背後に掲げてある額のガラス部分には俺の姿が映っている。

薄汚れたスウェットの上下に、ぼさぼさの髪、長すぎる前髪のせいで目元が隠れて表情が見えない。


「お前は隠れてコソコソ嗅ぎ回るのが好きなようだから銃の腕を磨け。使えるようになったらスナイパーとして俺の役に立て。いいか?」


親分はあのときより口調が柔らかくなっていた。


「ふん」

鼻で返事をしてやった。

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