第2話

久々に再会した人達と、おしゃべりが止まらない。

彼の友達や親戚。

アルバムを見て、彼の話をする。

最初は距離を感じていたけど、みんな以前と変わらず接してくれた。

退職を機に脱コンサバの私。

変なパーマで、喪服を着ておまけにほぼスッピン。

話しかけるのを、ためらわれたのも無理はない。

疲れてふわふわした感じのせいか、抑えていた彼のへの気持ちがMAXに。

 やばい、誰か止めて〜


お開きの時間がきて、すっかり打ち解けてしまったヒロちゃんが駅まで送ってくれる事に。

最寄駅のはずが、話が弾み…どんどん東へと。

ヒロちゃんの自宅とは真逆。

このままだと、家に着きそうな勢いだったのでファミレスへ入った。


「 あきちゃん、思ってた通りの人やった」


『何?どんな想像⁉︎』


「想像ってゆうか、彦さんから あきちゃんの話聞いてたし」


『うそ⁉︎ 普通元カノの話なんかする?

失礼な!』


「うん、でもまだ元カノじゃない時に出会ってたから…」


『……あぁ』


「ヒロも最初は好きな人おったし、彦さんも あきちゃんのこと好きなままやったし…

多分もっと一緒におったらどうなってたかわからへんけど、

ヒロはそこまで…

何て言うか…

まだまだ時間が足りんかった。

たった2ヶ月で

あきちゃんにはかなわへん…」


『……いや、

私はしっかりフラれたからね。

ついこの年末に、ミミちゃんって娘連れて帰って来てん。

もう、その時に終わってたから私ら』


「玄関開けたらロングブーツ事件!やね?」


『ん?笑 そんな事まで聞いてたんや…

何てゆうか…今回もミミちゃんかと思って、やいやい言うてもて。

ミミちゃんの残像が、私の中からずっと消えへんかったし、もう…なんか無理やなって。

で、ヒロちゃんやったから…

ミミちゃんじゃないなら、もうええよ!

お好きにどうぞって感じで…

終わりにした…んかな』


「連絡とってたやんなぁ?

ヒロ知ってるし、全然終わってなくない?」


『あ…うん、ごめん

でも、ホンマにもう

終わりにしようと…努力してた』



玄関開けたらロングブーツ事件!

とは…

家で帰りを待ってた私に起きた悲劇のこと。


『おかえり〜

  ん⁉︎…

 …何⁉︎ …誰?』


「うわっ お前 何なん⁉︎」


『何なんはこっちやわ、何なんその娘!

今から誰か来るん? 』

  せめて、誰かの彼女とかかなと

  淡い希望を持とうとした瞬間


「ごめん、そうゆうことやから」

  寄り添う二人

 咄嗟に、彼のニット帽をひっぱり抜いて

 こう言ってやった

『ちょっと見て

     めちゃ変な頭やろ⁉︎

          だから帰って』

「やめろや!ちゃうねん、

     帰るんは  お前やから」


『 ………?

あれっ⁉︎ 何で?またいつの間に?

… 私、さっきまで送別会で

明日から会社行かんですむから

今日は帰らへんって言うてもたやん。

いや、もう空気読んで 帰ってくれる?』


 クスッと笑ったように見えた瞬間

 玄関ドア前に立つその娘に飛び蹴りを…


 今度は彼が笑い出した

 掴みかかった私を止めるすべもなく、笑うしかなかったようだった

 無抵抗な女の子をボコボコにしてしまう

手前で我に返る


『あーしょうもな 会社辞めてもたやん、

明日からどうせえって言うん⁉︎

ちょっと、電車もう無いで!

帰られへんやんか

誰か迎えに来てもらうわ

とにかく、電話する』


 3件目でつながった絵里ちゃんは、彼氏と釣り具屋さんにいた


「え〜 来週一緒に釣り行くって約束してたのに、どうすんの⁉︎

今、下見に来てるねんで!」


『釣りどころじゃないから!

とにかく助けて!迎えに来て!』


 妙に落ち着いてた彼とミミ

2人の前からすぐにでも消えたかった

泣きながら、飛び出して帰るような女の子

やったら 何か変わってたかな

傷付いてるようにも見えんかったやろな


結局、絵里ちゃんカップルを待てず、そのミミちゃんの車で彼に送ってもらうハメに。


ミミの頭をポンと触って

「すぐ、帰るから」

と一言。


 今度は私が笑けてしまった


 修羅場って、笑けるんやなぁ…


 それにしてもミミってどんな名前よ!


彼を待ちながら、異変には気付いてた

やたら部屋がキレイに片付いてた

いや、電話の向こうの異変に気付いてしまったから無理して来たんやった

送別会から二次会を断って、急遽 家までやって来たんやった


家電話のコードが抜かれてた

何故かコタツの上に置いてあった指輪

MIMIって刻印がしてあった

誰かの忘れ物?程度に見てたけど

1週間前にナンパした娘を家に連れ込んでたなんて想像は…

全くしてなかった


この1ヶ月、母が交通事故にあって入院したり会社辞める決心したり

バタバタしてたから、ほったらかしにしてたなぁ…

会社辞めたら、2人でゆっくり過ごせると思って 頑張ってたんやけど…

必要なかったか…


彼の運転するミミちゃんの車にタクシー乗りして地元へと高速を飛ばす

絵里ちゃんカップルが待つゲーセンで降りるまでの間

平常心を保つのに必死やった


「また 連絡するな」


『は? いらんわ』


降りる時、振り返った彼の顔


哀しそうな目をして微笑む彼を

この期に及んで

愛おしいと思ってしまった

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366日 @ginei

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