◆13◇ 三つの円輪を、流転させよ。
君達が立つ色彩世界『セリーニ』は、三つの
『モルフォ』:cyanの大陸
『キトゥロ』:yellowの大陸
『アナトリ』:magentaの大陸
故に地図を持たない場合、自分が今どの大陸に居るか見極める方法がある。土に触れ、色を見ればいい。
『モルフォ』。
『キトゥロ』。
『アナトリ』。
――『リリックノア』なのだから。
さて。私がこの【創造記録】を遺した理由はただ一つ。輪廻に選ばれ、この世界を継ぐ
三つの円輪大陸を支配していた、
反乱者たる君達の根源である無彩色は、
【漆黒】だろうか?
〖純白〗だろうか?
君達が【漆黒】ならば、
〖純白〗の為政者を。
君達が〖純白〗ならば、
【漆黒】の為政者を。
反乱者達たる君達の敵は消えた。
だが次は、君達が新たな為政者となるのだ。
この世界を構成する『色』は時を経る事に絶対量が失われていき、為政者が
新たな為政者たる君達が世界の
暴食により色を回収し、
死を
回収した色を混沌と化し、
生を齎す【創造者】。
死と生の天秤を保ち、
輪廻を監視する【均衡者】。
為政者は、
そして、新たな反乱者が生まれる時。それは、次なる無彩色を根源とする時代の到来である。
新たな反乱者の候補者達は、君達の
新たな反乱者は、かつて反乱者だった君達のように、為政者から奪われる純粋な
だが混沌たる為政者よ、純粋たる反乱者の敵であれ。混沌の
この色彩世界を保ちたければ、
*_ + ◆◇◆◇+_*
廻り続ける輪廻の中に組み込まれている事実に、空虚な耳鳴りがした。私が選んだ『
私は輪廻に選ばれ、〖純白〗を与えられたのだろう。仲間になってくれたリィナも。私達二人は〖純白の反乱者〗なのだ。現れるはずの
そしてネリアルは【漆黒の為政者】であり、かつて私と同じく反乱者だった。
「為政者は、私と同じく
私の背を抱くネリアルの
「そうだ。【漆黒の為政者】となった俺達三人は、最初こそリリックノアの創り出した
私が、敵であると思い込まされていた為政者は……この世界を守っていた。時に死を
クヤカラがリィナの両親の記憶を奪ったのは、本当に平穏な日々を守りたいだけだったんだ。
私は誰を恨んだらいいのか分からないまま、縋るように【創造記録】を抱き締めた。
「何故……私に真実を告げたの? 私をずっと騙すことだって出来たはずでしょ」
「確かに、俺にとってもその方が都合が良いはずだった。〖純白の反乱者〗であるアイを
消えてしまいそうに震える声音に、私はネリアルを振り返った。宵闇の睫毛を静かに伏せた
「それに、もう【漆黒の為政者】である俺達は限界なんだ。不死とは言えずとも長い時の間、生まれ死にゆく
内なる痛みを堪えるように、美しい
「俺は『クヤカラ』の事について、アイに嘘をついていた。俺は仲間である【漆黒の為政者】を早く輪廻から解放してあげたいと願いながらも……死んで欲しくないとも思っていたから。ようやく見つけた〖純白の反乱者〗であり、俺の妹であるアイにも。だが輪廻に従わなくては世界ごと滅ぶ。……俺はアイにも、仲間達にも……安寧を守りたいが為に、矛盾だらけの隠匿をしてきたんだ」
「だから私の思考と記憶を操作したの……」
「……無知とは安寧を守る手段でもあるから。アイを
私を捉える
白皙の頬は僅かに朱を宿していた。憂いのある美しい
薄い唇から垣間見えた
告げるべき言葉も分からないまま、何かを告げようとした私の柔い唇ごと、重なった吐息は灼熱の侵入者に喰われた。呼応するように痺れていく甘さが、怖い。私は何をされているの?
存在を確かめるようになぞる灼熱から、ようやく解放された時。これは『恋人』にする行為だと、頭の何処かでようやく理解した私が遠くで喋る。
「ネリアルは……私を殺した
結びついた答えに安寧を引き裂かれた私は、帰るべき故郷と親愛なる兄を奪われた。視界が勝手に涙で歪んでしまう。
「……俺は正じゃない。脆い俺が、今明かせるのはそれだけ」
全てを明かさないくせに。ネリアルはそれでも、私をもう一度抱きしめて離さない。重なる鼓動と体温に冷静じゃいられないのに、まだ『兄』でいるつもりなんだろうか。
「〖太陽の救世者〗を語るなら、俺を救ってくれないか。三つの円輪が流転し続ける、この世界ごと」
私から全てを奪っておいて、ずるい兄は縋るように救済を求める。廻り続ける輪廻に惑う私は……答えを見い出せないまま、痛いほどに強く私を
色変わりプロデュース!! _この異世界は、異常だ_ 鳥兎子 @totoko3927
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